賃貸経営に成功する人と失敗する人の違いは、いったいどこにあるのか――。税理士として大家さんを支援し、自身もアパート経営を行う渡邊浩滋氏に聞いた。
渡邊浩滋(わたなべ・こうじ)
税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所 代表
税理士、司法書士、宅地建物取引士

家業の賃貸経営を引き継ぎ、収益改善を図った経験を持つ。税理士、大家の両方の視点から賃貸経営の支援を行う。

賃貸物件を所有し、収益を得ることは、不動産投資というより、一つの“事業”ととらえるべき。そこには経営の意識が求められます。しかし現実には、“経営者視点”を持っているオーナー、大家さんは少ないのが実情です。なぜなら多くの人は、「賃貸経営自体をやりたい」と考えてこの事業を始めたわけではなく、相続対策や不労所得を目的に物件を建てたり、購入したりしているから。ある意味、受動的なのです。賃貸市場の競争が激しくなる中、今後は経営者視点や当事者意識の有無が事業の成否により大きく影響するようになるでしょう。

では大家さんが具体的にすべきことは何なのか。それは、人・物件・お金の管理にほかなりません。大家業とは、マネジメント業なのです。さらに中長期的な視点に立てば、それは“計画の管理”と考えることができます。人・物件・お金について、スタート時にできる限りシビアな計画を立て、それに即した運営ができているかを常にチェックする。そして、計画を下回っていれば問題点を探して改善する。こうした継続的な動きが必要になります。

リスクを回避するためのサービスも賢く利用を

大家さんの中には、確定申告では大きく黒字なのに、実際の収支は赤字、つまり手元にお金が残っていないという人が見られます。これは一つには、税金計算上の収入金額・必要経費と実際の収入・支出が異なる場合があることを理解していないために起こります。下にまとめたとおり、賃貸経営においては、「お金が入らないが、収入金額になるもの」などが存在します。事業ということであれば、当然この辺りもしっかり認識しておくべきでしょう。

また賃貸経営というのは、時間がたてば建物は老朽化し、家賃も下がる。放っておけば右肩下がりの事業であることも知っておくべきです。しかしだからこそ、経営者視点で工夫をすることによってほかの物件と差別化を図れる。アイデアしだいで付加価値を生み出せる点が醍醐味でもあります。確かな賃貸需要のあるエリアでさえあれば、まだまだ伸びしろがあるのが賃貸経営。それがアパートの大家も務める私自身の実感です。

今の時代は、賃貸経営のさまざまなリスク、例えば空室や入居者とのトラブル、メンテナンスなどに対応する周辺サービスも充実しており、それらを賢く利用することで、相当程度危機を回避することが可能です。当然、回避すべきリスクの種類は、物件の種類や規模によって異なりますから、これも費用対効果を考え、事前の計画に織り込んで、継続的にマネジメントしていくことが求められます。

繰り返しになりますが、まだまだ受け身の大家さんが多い中、先を見据えた戦略的な経営ができれば賃貸事業で収益を上げていくことは十分に可能です。行動力、実行力が重要な武器であることを知り、前向きな取り組みで成功をつかんでほしいと思います。