イー・パレット・コンセプトは、一見すると箱型のEV。しかしその実態は、EV、シェアリング、自動運転といった次世代自動車の技術の全てを取り込み、なおかつ、用途に応じて柔軟に形を変えるプラットフォームです。例えば、朝夕はライドシェアリングとして利用され、昼間は移動店舗や移動ホテル、移動オフィスにと、「パレットのように」姿を変えられるとしています。

「将来はイー・パレットにより、お店があなたのもとに来てくれるのです」と豊田社長。すでにアマゾン、滴滴出行、マツダ、ピザハット、ウーバーなどがパートナーとして発表されており、今後は彼らと実証実験を進め、2020年の東京オリンピックでもイー・パレットで貢献する、と宣言しています。

ITソリューションを一気通貫に提供する新会社を設立

田中道昭『2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路』(PHPビジネス新書)

2018年3月には、トヨタコミュニケーションシステム・トヨタケーラム・トヨタデジタルクルーズのIT子会社三社を統合し、2019年1月に新会社トヨタシステムズを設立することが発表されました。これには、自動車業界が直面する「100年に一度」の大変革期においてITが果たす役割がますます大きくなるなか、3社がこれまで個別に担ってきたノウハウを一本化、ITソリューションを一気通貫に提供することで、トヨタグループの連携強化に貢献するという狙いがあるようです。

同じく3月に、デンソー、アイシン精機と共同による自動運転の新会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスド・デベロップメント(TRI-AD)」を都内に設立することも発表。英語を社内公用語とし、国内外から1000人規模の技術者を採用、また三社で3000億円以上を投資することで、自動運転技術の開発を急ぎます。CEOには、元グーグルのロボティクス部門長が就任することが決まりました。トヨタは2016年にAI、自動運転、ロボティクスなどを研究するTRIをシリコンバレーに設立していましたが、国内に新会社を設立することでさらなる競争力の強化を図ります。

次世代自動車産業の4つの潮流である「CASE」

今後トヨタはどうなるのか、どうするべきなのか。次世代自動車産業の4つの潮流である「CASE」を軸に、分析してみたいと思います。

まず「CASE」の「C」、コネクティビティです。私がトヨタのサービスが「ガラパゴス化」しないか最も懸念している部分です。それは、コネクティビティでは、クルマと通信や各種サービスをつなげるだけではなく、生活の全てが相互につながるということが期待されているからです。

トヨタは2018年1月にアマゾン・アレクサの搭載も発表した一方で、かなり前から、テレマティクスサービスに挑戦し、独自のプラットフォーム「T-Connect」を展開していました。もっとも、T-Connectは自動車内で使うことを前提としたサービス。アマゾンがアマゾン・アレクサを武器としてスマートホームからスマートカーに攻めてきているのに対して、トヨタはT-Connectでスマートカーから攻めていくという構図になっています。

この構図は、アマゾンがECからリアル店舗を攻め始めているのに対して、リアル店舗の企業がECを攻めようとしているのに酷似しています。物流倉庫内にある膨大な在庫を背景とする優れた品揃えと「ビッグデータ×AI」をもとにしてリアル店舗を展開するアマゾン。かたや「限られた店舗での品揃えをもとにさらに限られた品揃えでEC店舗を展開しようとしている」というリアル店舗の企業側が仕掛けている戦いの構図。後者には厳しい戦いです。