「プロの競技場」と「校庭緑化」の違い

「日本の芝生文化をピラミッドに例えると、一番上にはプロ選手が使う競技場があり、真ん中には市民が使うグラウンドや公園など、そして一番下には幼稚園や小学校の校庭緑化があります。子どものうちから芝生に親しんでもらいたいのが、校庭緑化の目的です。下が広がらないと、ピラミッドも大きくならず、芝生文化は深まりません」

こう話しながら池田氏は、日本人の「芝生」に対する誤解も指摘する。

「多くの日本人は、芝生とは、『芝』という草を植えたものだと思っています。でも英語では植える草をグラス(grass)、刈り込んでじゅうたんのように仕上げた状態をターフ(turf)と呼ぶように、本来、芝と芝地は別もの。芝生用に植える品種もさまざまです」(池田氏)

「校庭緑化」ブームが根付かなかった理由

ポットに入った苗(グラス)を植え育て、周辺に生える雑草も一緒に刈り込んで芝生(ターフ)にする(画像提供/オフィスショウ)

10年ほど前、東京都内で「校庭緑化」に取り組んだ小学校が相次いだ。「芝生の校庭なら、子どもも喜ぶ。転んでも痛くない」と、数千万円を投資した学校もあった。だが近くにマンションが建って日当たりが悪くなるなど、想定外の事態も発生。管理コストもかさみ、そうした熱気は冷めた。そもそも大半の学校は、校庭・園庭の芝管理にかけられる予算が少ない。

池田氏はこうアドバイスする。

「校庭の環境にもよりますが、日当たりのよい場所なら、石などを取り除き、生えている草(グラス)を一定の長さに刈り込み、芝地(ターフ)にすればいいのです。一流選手に最適なパフォーマンスを発揮してもらう『競技場の芝生』と、子どもたちが楽しめる『校庭の芝生』は、目的も役割も違います。まずは柔軟に考えましょう」

草は伸びるので、一度整備すれば終わりではなく、必ずその後の手入れが必要になる。池田氏は校庭整備を担当する関係者にそうした手法も具体的に話し、保全の仕方をアドバイスするという。