ITは「知の制度化」を破壊する

それを象徴するのが、現代中国の巨大IT企業、アリババ集団の創始者ジャック・マーです。彼は大学受験に2度失敗し、三輪自動車の運転手をしていました。その後、英語の教師となり、1995年にたまたまアメリカに行ったときにインターネットの将来性に感激し、1999年に会社を設立したのです。そして、まったく独力で、世界最先端のIT企業を作り上げました。

ITは、知の制度化を大きく破壊しています。大学で学んだ知識は陳腐化してしまっています。他方で、ウェブを見れば、最先端のことまで分かります。

制度化された現代の最強のギルドである医学さえ、最先端の分野では変化から免れません。例えば、AIによって自動診断が可能になると、診療の分野にデータサイエンスの知識が必要になり、伝統的な医学だけでは不十分ということになるでしょう。

そして、AIの時代になれば、知の世界はさらに根本的な変化にさらされます。それによって、独学への先祖返りが起きるでしょう。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省(現・財務省)入省。72年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2011年4月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10
(写真=つのだよしお/アフロ)
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