AIは、命令されれば株式市況やスポーツ記事を書くことができます。しかし、人間から命令されずに、『戦争と平和』の現代版を書くという気持ちにはならないのではないでしょうか?

知識を得る過程そのものに価値がある

さらに、つぎのようなことも言えます。知識は、何かを生産するための手段として必要なものと考えられてきました。しかし、実は知識そのものが重要なのかもしれません。つまり、知識を得ること自体に価値があるかもしれないのです。これは知識に関する深淵(しんえん)な問いです。

人間は、子供のときから謎解きに挑みます。答えを得たところで何の役にも立たないと知っていても、謎解きの過程そのものが楽しいから、それに挑戦するのです。

以上のように考えると、AI時代においては、勉強の必要性がなくなるのではなく、逆にますます重要性を増すことがわかります。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省(現・財務省)入省。72年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2011年4月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10