このように、リーダーシップ開発に対する取り組み方に米国と日本で違いが出てきた背景には、キャリアパスの捉え方の違いがある。

これまで日本での人材戦略は、特定領域の専門家よりは、その企業でのジェネラリストを育成するというものだった。結果として多分野の専門知識を持った人材を育てるためのローテーションが施され、その延長線上に管理職層の選抜システムやキャリアパスが敷かれてきた。その結果、日本ではリーダーシップはキャリアパスを通じて暗黙的に開発されるものであり、過去の業績が良ければリーダーシップもある程度備わっていると捉える傾向がある。

一方米国では、管理職層に上がるまでは、特定の専門分野で経験を積むスペシャリスト意識が比較的高く、その専門性が他社への転職を容易にしている。しかし、この意識を管理職になっても引きずると、セクショナリズムが強くなり、「サイロ組織」と呼ばれる閉鎖的な組織をつくりあげてしまう。

したがって、米国では管理職層以上でのキャリアパスと育成は、非管理職時代とは大きく異なる。管理職になると、特定領域の専門性によらない広い視野を持ち、リーダーとしてチームをマネジメントする人間力を養う「リーダーシップ」の開発が始まり、そのためのアセスメントやローテーションが施されるのだ。このとき、米国では心理学的なアプローチを含めたリーダーシップ開発のニーズが高まり、リーダーとして人を動機付ける能力が注目されるようになった。

一方、日本では、終身雇用が根底にあったため、前述の日本特有のキャリアパスをベースに、社内固有の能力やネットワーク、過去の業績や認知度に頼ったリーダーシップが主流だった。このため、リーダーシップの開発に目が向けられなかった。