「理想と現実のギャップ」が離職を生む

学生側の視線も厳しいが、中には会社側の説明をうのみにして入社を決める学生も多いだろう。そうなると理想と現実のギャップによる離職の可能性である。

大手人材サービス会社が公表を控えている2018年度入社の新入社員の特徴を分析した調査がある。企業の採用試験では「適性テスト」が実施されるが、その適性テストから今年の新入社員の特徴を分析している。性格面では協調性、持続性が強く、また好感表現力、対人調和力が強い。どのような言動をすれば相手に自分がどう写るかを把握し、相手に合わせてコミュニケーションがとれる、つまり空気を読む力に長けている。仕事に関しては行動性、競争性、野心性も弱い。これは2015年度新入社員との比較でも総じて低くなっている。

注目すべきはストレス耐性である。分析結果によると「現実と理想のギャップ」に弱く、「仕事の負荷量」は2015年度より弱くなっている。つまり、仕事の負荷に耐えられなくなっているとともに、自分がこうありたい理想像と現実にギャップがあるとストレスをため込みやすいタイプが多いという。

複数の大学でキャリアコンサルティングを実施している就職・採用アナリストの斎藤幸江氏も「2018年卒の学生の特徴として、職場で嫌なことがあっても、おかしくないですか、と批判的なことを言えないタイプが多い。そのため内部にストレスを溜め込んでしまい、やがて破裂してしまう」と指摘する。

また、この世代が怖いのは「いつもニコニコと普通に働いていながら突然辞表を出してくることだ」と語る人事担当者もいる。

働き方改革をアピールするのはよいが、謳い文句と実態がかけ離れていれば、「現実と理想のギャップ」のストレス耐性に弱い性格が災いして離職する可能性もある。実際に大卒後3年以内の離職率が3割という状態が長く続いている。焦って人材を獲得しても離職すれば元も子もない。他社の動きに追随することなく、独自の採用手法をもっと検討すべきだろう。