これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、東京海上ホールディングスの永野毅グループCEOのインタビューをお届けしよう――。

損保業界トップが語る、「いる人材いらない人材」

──損保業界を取り巻く環境をどのように見ていますか。

日本は人口が減ります。その中で成長を持続させるというタスクは非常に難しい。日本は稀に見る自然災害国。日本だけにビジネスを集中させていると、日本のお客様をお守りできないおそれがあります。世界に打って出て、地理的・事業的にリスクを分散させ、グループとして事業の安定性を図る必要があるでしょう。

東京海上ホールディングス グループCEO 永野 毅氏

──グローバルで活躍できるのは、どのような人材ですか。

まず多様性を受け入れる度量が大切です。同質の人と仕事をしていると、心地いいかもしれませんが新しいものは生まれてこない。異なるバックグラウンドを持った人と交わり、自分の中に取り込む力が必要です。

アイデンティティーを持つことも重要です。個人なら自分の価値観、会社なら経営理念などのコーポレートアイデンティティーを貫くべきです。私たちは保険をやる集団。たとえ一人ひとりの宗教が違っても、地域社会で人々が困ったときにお役に立つために自分たちは存在しているという軸は世界共通でなければいけません。

──多様性を受け入れる力は、どうすれば身につけられますか。

多様性の中に身を置く経験をしなければ無理でしょう。だから社員にはできるだけ若いうちから多様な経験をさせたい。具体的には、入社10年経つ前に、海外経験をさせたり、地方の現場や損害サービス部門の第一線などに立たせる。次の10年は、一人ひとりの適性を見てキャリアプランを立て、それに沿った経験をさせるといった取り組みをしています。

──同じような経験をしても、伸びる人と伸びない人がいます。

人材育成の要諦は、誰でも偏見なく同じように「期待」して、同じように「鍛えて」、「機会と気づき」の場を平等に与えるという3つのKです。これらを同じように与えれば人は自ら育ってくれます。