案件が大きくリピートを見込める顧客なら、多少の手間がかかっても訪問頻度を上げ攻略すべきだろう。一方、受注に至れば金額が大きい相手でも、ライバル企業がガッチリ抱え込んでいるとわかれば、接触の方法や頻度は変わってくる。状況に合わせ、アプローチ対象を常に見直したい。

顧客と話をする際、ヒアリング力が大事だと認識している営業担当者は多い。しかしヒアリング以前に、案件がなければ顧客と会話ができない営業担当者が少なくない。アポイントが取れても、初回の訪問でマニュアル通りに商品説明を行い、購入条件を聞ければそれで満足して帰ってきてしまう。顧客から本音を引き出せず、当然顧客の心に刺さる具体的なメリットも提示できないため、成約につなげることもできない。

「新規事業立ち上げの計画がある」「解決すべき課題が持ち上がっている」など案件につながる重要情報を入手するには、「何を聞くか」だけでなく「どのように聞き出すか」も知っておくことだ。

本音を引き出すには、「条件」ではなく「状況」を聞くべきである。しかも売り込みたい商品に関係する状況ではなく、顧客全体の情報を収集するのだ。得た情報を分析し、顧客の抱える問題や課題を把握して解決方法を一緒に考えることで、パートナーとしてのポジションを獲得することができる。そのためには、ヒアリング項目だけでなくヒアリング手法を可視化し、それをもとに実践的なトレーニングを実施することが大切だ。

(構成=野崎稚恵)