イケアはなぜ新宮を選んだのか

結局、イオンに代わってイケアが進出を決めた。九州各地に出店しているイオンと違い、イケアにとって九州出店は初めて。しかもイケアは世界的なブランドであり、九州全域からの集客を見込める。災い転じて福となす、と言うべきかもしれない。

牧野洋『福岡はすごい』(イースト新書)

イケアはなぜ新宮を選んだのか。イケア・ジャパンは「福岡を九州の主要なマーケットと位置付け、ストアの開店に向けて用地を選定してきました。新宮は新駅の駅前ということで、公共交通機関、福岡市内からの車でのアクセスもよく、利便性が魅力でした」と説明する。

確かに立地条件は抜群だが、それだけではない。いかに交通の便がよくても、新宮の地理的中心部が「狭間」だったらどうなっていただろうか。開発から取り残され、下水処理場も整備されていなかったら、イケアは魅力を感じなかったのではないか。

イケアは進出地に求める条件として「子育てしやすい」や「環境に優しい」も挙げている。この点で新宮は合格だ。だから子育て世代が続々と新宮へ転入しているのである。

このような環境をつくる起点になったのが、駅前で下水処理場と公園を一体的に整備する「新宮方式」だ。これによって町の地理的中心部は「みんなが嫌がる迷惑施設」ではなく「みんなが集まる憩いの場」になった。最終的にはイケア誘致にもつながって「街おこしのイノベーション」が実現したのである。

ちなみにイケアのトイレでは、目の前の公園の下にある下水処理場で処理された水が再利用されている。(文中敬称略)

牧野 洋(まきの・よう)
ジャーナリスト
1960年生まれ。慶応大学経済学部卒業、米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修了。1983年、日本経済新聞社入社。ニューヨーク特派員や編集委員を歴任し、2007年に独立。早稲田大学大学院ジャーナリズムスクール非常勤講師、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)理事。2008~13年カリフォルニア在住、2013~16年福岡在住。著書に『米ハフィントン・ポストの衝撃』『共謀者たち』(河野太郎との共著)『官報複合体』『不思議の国のM&A』『最強の投資家バフェット』など。