政府機関を多数顧客にかかえるティールのデータ分析会社パランティアは、軍の不透明な調達プロセスの問題で裁判を起こしている。裁判所は2016年10月に、パランティアが当初は除外されていた2億600万ドルの入札に参加する権利を認めた。フォーチュン誌ですら、2017年4月に13ページに及ぶ特集記事で、従来から取引のある軍需企業のみを優遇するペンタゴンのやり方を難じている。

ティールの腹心、続々と政権周辺に

その他にティールがトランプの政権移行チームに送り込んだのが、ケビン・ハリントンとマーク・ウールウェイだ。ティール・キャピタル等で要職にあったハリントンは、米国家安全保障会議(NSC)の理事会に招聘され、商務省の空きポストに配属された。ウールウェイは財務省に配属された。ウールウェイは2000年からティールとつきあいがある。最初ペイパルで働いていたが、その後、ティールのヘッジファンド、クラリウム・キャピタルの経営責任者も務めた。

デイビッド・ゲランターは、トランプのサイエンス・アドバイザーの候補として話題になった。ここでもティールが裏で糸を引いている。ゲランターの専門はITで、イエール大学の有名教授だ。爆弾魔セオドア・カジンスキーが送りつけてきた手紙爆弾で重傷を負った被害者でもある。しかし彼がその名を知られるようになったのは、インターネットの意義と発展を予言したことによる。

90年代初頭の著書『ミラーワールド──コンピュータ社会の情報景観』(ジャストシステム)で、彼はすでにグーグル検索やグーグルマップのようなサービスについて言及している。また反知性主義の立場に立ち、愛国心と伝統的な家族観が崩壊したのは、知性偏重のせいだと主張している。もしもゲランターがサイエンス・アドバイザーのポストに就けば、前例のない人選になる。彼は物理学者でも生物学者でもなく、情報科学者だからだ。

ゲランターは気候変動の議論に対しては懐疑的だ。「人間が気候を変化させるという考え方は極端な仮説です」というのだ。彼からすると、気候変動を裏づける証拠は存在しない。ティールとゲランターは友人だ。ゲランターは、ティールが年に1度フランスのリビエラで開催する、すぐれた知識人や思想家たちを集めたカンファレンスにも出席している。

政権でのティールの動きに、まだしばらく目が離せない。

トーマス・ラッポルト(Thomas Rappold)
起業家、投資家、ジャーナリスト
1971年ドイツ生まれ。世界有数の保険会社アリアンツにてオンライン金融ポータルの立ち上げに携わったのち、複数のインターネット企業の創業者となる。シリコンバレー通として知られ、同地でさまざまなスタートアップに投資している。シリコンバレーの金融およびテクノロジーに関する専門家として、ドイツのニュース専門チャンネルn-tvおよびN24などで活躍中。他の著書に『Silicon Valley Investing』がある。