現在の福岡市は数十年前のアメリカ西海岸であると考えたらどうだろうか。すでに述べたように開業率では日本一であり、少なくともポテンシャルはあるのではないか。同市が「スタートアップ都市」を宣言したのも、市長の高島宗一郎がシアトルを訪問して衝撃を受けたからである。

九州大学が「日本のスタンフォード」を目指す背景

福岡に本拠を置く九州大学も同じベクトルで動いている。シリコンバレーの中核を担うスタンフォード大をお手本にして「日本のスタンフォード」を目指している。同大が立ち上げた部活動「起業部」は全国的注目を集めた。一方で、「妖怪ウォッチ」で有名なレベルファイブを率いる社長の日野晃博は福岡市のニュースサイト上で「福岡をゲームのハリウッドにしたい」と公言している。同社は本社を福岡に置いている。

少子高齢化が急速に進んで明るい未来を描きにくくなってきた日本。しかも、アメリカでGEやGMなど伝統的大企業が凋落したように、日本でも伝統的大企業が凋落している。経団連会長を輩出した名門企業、東京電力と東芝の2社が代表例だ。前者は福島第一原発事故、後者は不正会計事件をきっかけに失墜している。

私は都市問題の専門家ではない。しかし、日本経済新聞で25年近く記者を続けた経済ジャーナリストである。さらにはカリフォルニアから福岡へ移り住み、アメリカ西海岸と福岡の両方を実体験している。『福岡はすごい』のために多くの関係者に取材し実体験を補強し、「福岡は日本の西海岸」との思いを強めた。

福岡のポテンシャルを引き出せば、東京に依存しないで世界とつながる「ローカルハブ」が誕生し、地方発で日本全体を変えるきっかけにならないか。荒唐無稽ではない。福岡はリバブルでグローバルであると同時に、イノベーションとエンターテインメントで強みを持っている。アメリカ西海岸と似た条件を備えているのだ。

「フラクタル理論」に従えば、アメリカ西海岸の一部を切り取っても、そこには全体と同様の形が現れる。いわゆる「自己相似」であり、全体と同じようにシアトル、シリコンバレー、ハリウッドの3要素がそろっている。福岡もそのように位置付ければいいのかもしれない。(文中敬称略)

牧野 洋(まきの・よう)
ジャーナリスト
1960年生まれ。慶応大学経済学部卒業、米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修了。1983年、日本経済新聞社入社。ニューヨーク特派員や編集委員を歴任し、2007年に独立。早稲田大学大学院ジャーナリズムスクール非常勤講師、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)理事。2008~13年カリフォルニア在住、2013~16年福岡在住。著書に『米ハフィントン・ポストの衝撃』『共謀者たち』(河野太郎との共著)『官報複合体』『不思議の国のM&A』『最強の投資家バフェット』など。