住みやすい街にはクリエイティブな人たちが集まる

実は、リバブルは21世紀型都市を語るうえで不可欠な要素だ。「クリエイティブ都市論」を唱える米都市経済学者リチャード・フロリダによれば、リバブルでなければ都市の発展は望めない時代になりつつある。

牧野洋『福岡はすごい』(イースト新書)

インターネット時代に入り、IT(情報技術)やデザインなどの分野で活躍するクリエイティブな人たちは好きな場所で働けるようになったからだ。好きな場所で働けるならば、住む場所を選ぶうえでリバブルは決定的に重要になる。

サンフランシスコやシアトルなどリバブルな都市が多いアメリカ西海岸を見てみよう。世界中からクリエイティブな人たちを引き寄せたことで、アメリカ全体の成長エンジンになっている。

リバブルで有利なポジションにある福岡は日本の西海岸に相当すると考えてもいいのではないか。すでに起業の多さを示す開業率で日本一であるうえ、国家戦略特区に指定されて「スタートアップ都市」を宣言している。

個人的にも福岡とアメリカ西海岸の両方で実際に生活し、多くの共通項を発見した。両者とも(1)政治・経済の中枢機構から離れた西端「西海岸」に位置する、(2)イノベーションとエンターテインメントに強い、(3)都会でありながら豊かな自然環境に恵まれている、(4)グローバルであり多様的――なのである。

「ITビッグ5」の時価総額合計はドイツに迫る

さて、ここで大胆な仮説を立ててみたい。

福岡とアメリカ西海岸が多くの面で共通するならば、「福岡が日本を救う」という未来を描けるのではないか。なぜなら、アメリカがそうだったからである。東海岸エスタブリッシュメントに対するアンチテーゼである西海岸がアメリカを救ったのだ。

経済の鏡と言われる株式市場を見れば一目瞭然だ。2018年の1月2日時点で見ると、株式時価総額で世界の上位5社はアップル、アルファベット(グーグルの親会社)、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック。そろってアメリカ西海岸企業であり、まとめて「ITビッグ5」と呼ばれている。

時価総額とは平たく言えば企業の値段であり、M&A(企業の合併・買収)の際に最も重視される数字だ。ITビッグ5首位のアップルの時価総額は8609億ドルで、1ドル=110円で日本円換算すると95兆円になる。ITビッグ5合計で3兆3300億ドルだ。

あまりに巨額で、にわかにイメージしにくい金額だ。7カ国(G7)を構成する主要国の国内総生産(GDP)と比べてみよう。ITビッグ5の時価総額合計はフランスやイギリスを上回り、ドイツに迫っている。ドイツはGDPで世界第4位の経済大国だ。