ここでいいたいのは、あの孫正義さんでさえ、ゼロイチで成功するのは難しいと考えているし、ゼロイチで絶対に成功する企業を見抜くこともできない、という事実です。孫さんも自分でそれがわかっているから、広く浅くポートフォリオ(資産の組み合わせ)を分散して投資するようにしていると私は考えます。つまり、その事業が成功するのかどうか、事業の最先端にいる孫さんですら確たるものがつかみにくいのですから、普通の人に簡単にわかるはずがありません。

日本に起業家が少ない理由

起業は、一度経験すれば、成功しようと失敗しようとものすごい経営スキルが身につきます。2回、3回と繰り返せば、どんどん強い経営者になります。

世界には一度成功を収めたのち、その会社を手放してまた新たな事業を始める「連続起業家(シリアルアントレプレナー)」がたくさんいますが、日本にはあまりいません。たいていは自分の作った会社に居続けるか、売却して富を得たら投資家になったり、隠居したりしてしまいます。

また、一度起業に失敗し、そこから立ち直って再び起業に挑む人も、世界にはたくさんいますが、日本ではレアケースです。世界では起業がうまくいかず倒産させた人は、経験者としてポジティブにみなされますが、日本では非常にネガティブに考えられます。蜘蛛の子を散らすように周囲から人が去っていき、冷たい目で見られます。

たくさんの失敗経験をもとにした2回目の起業は、成功の可能性がぐっと上がるはずなのですが、日本では、再起をしようにもその業界では相手にされません。銀行も融資をしてくれません。周りの環境が起業のハードルを相当上げてしまっているのです。

いずれにせよ、起業家として成功するためには、どんな苦難があってもへこたれない強靭な(ぶっ飛んだ)精神力や強烈な運も持っていなければいけません。ゼロイチ起業家になり、成功するのは、このようにとてつもなく困難なことなのです。

三戸政和(みと・まさかず)
株式会社日本創生投資代表取締役CEO。1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先にてM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、事業再生支援を行う株式会社中小事業活性の代表取締役副社長を務め、コンサルティング業務も行っている。
(写真=時事通信フォト)
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