GMSが立ち直る術はあるのか。カギを握るのは「食」だ。食品売り場はこれまでもGMSの強みだった。従来は、4人家族の専業主婦をターゲットにし、素材から調理してもらう「内食」をメインとしていたが、今は有職女性やシニア層を中心とする2人あるいは単身世帯などに需要の高い「中食」を充実する方向にかじを切っている。調理済みのものを購入する中食はコンビニが得意とするところだが、生鮮食品を扱うGMSでは「作りたて感」を武器に顧客を奪還しようとしているのだ。

イートイン需要の拡大を受けて、お店で買った商品を気軽に食べられる「店食」にも力を入れている。これは欧米発の新潮流で、「グローサラント」と呼ばれている。食料品を意味する「グロサリー(grocery)」と「レストラン」をあわせた造語で、つまりスーパーの食料品売り場とイートインが合体したような形態だ。

アピタテラス横浜綱島店(著者撮影)

各GMSは、食をメインにした新店舗を開業している。3月16日にオープンした「イオンモール座間」(神奈川県座間市)は、3階建ての全フロアに食関連のスペースを広く設けた。3階に約1000席のフードコート、2階にはレストラン街、1階にも食物販ゾーン&イートインスペースを配置し、各階で食事がとれる仕組みだ。3月30日に開業した「アピタテラス横浜綱島店」(神奈川県横浜市)の目玉も、直営食料品売り場「アピタフードマーケット」と飲食関係の専門店19店舗だ。

役割を終えて業態が消えていく

2019年10月に予定される消費税増税で、外食には10%の消費税がかかるようになるのに対し、テークアウトや宅配には軽減税率が適用され、8%のまま据え置かれる。軽減税率のガイドラインでは、イートインは対象外になる指針が示されている。多くの外食企業が宅配やテークアウトに力を入れるようになることは明らかで、業界の垣根を越えて胃袋争奪戦は激化するだろう。GMSもそれに対抗すべく、ますます食へと特化していくことが考えられる。

昭和に立ち上がり、日本人の生活を変革したGMSという業態は、平成でいったんの役割を終えた。ディスカウントストアや飲食の力を借りた、新しいスーパーマーケット像をつくっていくことになるのだろう。「GMS」の名に縛られない、新たな業態が誕生するかもしれない。世界で類をみない人口減・超高齢化・多様化の消費マインドの中、どのような変化をしていくのか、楽しみでもある。

渡辺 広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト・コンビニ評論家
1967年、静岡県生まれ。東洋大学法学部卒業。ローソンに22年間勤務し、店長やバイヤーを経験。現在はTBCグループで商品営業開発に携わりながら、流通分野の専門家として活動している。『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ)レギュラーほか、ニュース番組・ワイドショー・新聞・週刊誌などのコメント、コンサルティング・講演などで幅広く活動中。
(写真=AFP/時事通信フォト)
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