経営統合についての判断とは

金融庁はこの報告書において地銀の経営統合について「都道府県内のシェアなどにより画一的に是非を判断するのではなく、経営統合を通じて地銀がどのようなビジネスモデルを描き、実行していくかを見極めるとともに、地域にもたらされる恩恵、寡占・独占の弊害の可能性、地域の中小企業の真の不安の所在を把握し、これらに対して的確な対応を行うことが重要である」と述べる。

ここで問題になるのが、公正取引委員会(公取委)の見解だ。長崎県ではふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の経営統合が計画されているが、公取委が「市場寡占につながる。金融を特別視しない」と統合に待ったをかけている。ふくおかFGと十八銀行に対して統合後のシェア低減措置を公取委は求め、両行は債権譲渡を検討している。

これに対し、金融庁と福岡財務支局が今年1月~2月に行った長崎県内の中小企業99社の聞き取り調査では、64社が「信頼関係が構築されておらず、事業への理解のない金融機関に譲渡される」など、「債権譲渡には不安がある」と回答している。

金融庁は、債権譲渡地域金融機関は厳しい環境に直面しており、公取委が従来の判断の枠組みで経営統合の是非を判断するなら、「統合による地域貢献の余地を狭め、地域金融インフラの確保や金融仲介の質の向上に負の影響が懸念される」としている。公取委は独占禁止法により審査、金融庁は銀行法での審査。両者の主張が対立しており、金融庁の報告書では「日本経済の変化を踏まえた総合的な競争政策の在り方を政府全体として議論・検討する必要がある」と主張している。

政府を巻き込んだ官庁間闘争の様相を呈しているが、地銀の生き残り策が多くないこともにじませている。

(写真=iStock.com)
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