選択肢としての経営統合

こうした環境下で経営統合(合併)は「金融機関の健全性を維持するための一つの選択肢だ」と報告書はいう。金融業はシステム費用や人件費など多額の固定費が発生するため、規模の経済が働きやすく、経営統合はシステムなどの共通化、重複店舗の削減などによる規模の利益の発揮を通じて金融機関の経営体力を高める可能性があるからだ。

また、経営統合により生み出される余力が、時間をかけた取り組みが必要とされる地域企業の育成、地域経済の発展のために使われれば、地域にとって恩恵がもたらされる。このことは競争のあり方を金利の高低による「一元的な競争」から本業支援など様々なサービスを競い合う「多元的な競争」へと転換することにもつながる。

ただし、同一地域内の経営統合により、利用者にとって金融機関を選択する自由が失われ、金融機関の市場支配力が高まり、金融機関の寡占・独占の弊害が生じることを防がなければならないと報告書はいう。

同一地域内の金融機関同士の経営統合は、重複店舗の整理統合などの面で統合のメリットを一層発揮しやすい。他方、同一地域内の経営統合により、利用者にとっての選択肢が失われ、金融機関の市場支配力が高まり、金融機関が独占利潤を得たり、サービスの質を悪化させるという寡占・独占の弊害を生じさせることがないようにしなければならない。

依然として高い担保・保証への依存

現状、県外からの参入圧力などにより競争環境が厳しくなる中、不当な貸出金利の引き上げなどが生じる恐れは小さいと報告書は言う。また一般的に、信用力の高い企業や規模の大きな企業については、県外企業からの積極的な勧誘が行われると考えられ、経営統合によってこうした企業にとっての借入先の選択肢が限定される可能性は低い。他方、比較的小規模な、業績が必ずしも良好でない、または担保となる資産を有していない企業においては、経営統合後に金融機関からの借入がより困難とならないようにすることが必要である。

しかし、現在の地銀の一般的な貸出姿勢を調査からみると、担保・保証への依存度合が高く、企業の事業性評価ができていないところが多い。従って、こうした地銀では経営統合以前の時点で、借入先の選択可能性が限定されている。つまり、この点から言うと、寡占・独占の弊害というより、むしろ「担保・保証の有無に関わらず事業性を見た融資が普及していないところに問題の本質がある」と報告書はポイントを指摘した上で、「金融庁がこれまで行っている事業性評価に基づく融資や本業支援の促進、企業ヒアリング・アンケート調査の実施、金融仲介機能のベンチマークなどの客観的な指標を活用した自己評価や開示の促進などの取組をさらに促進すべきである」と主張する。