なぜ調査報告書のつじつまが合わないのか?

そして、財務省が、森友学園問題をめぐる公文書改ざん事件についての内部調査報告書を6月4日に発表した。かなり詳細に書かれているけど、肝心のところは逃げている。それは、佐川宣寿前国税庁長官(当時の理財局長)が、なぜ部下に文書廃棄や文書改ざんの(暗黙の)指示を出したかについての動機だ。

理財局が文書廃棄や文書改ざんに動いた目的は、国会からの厳しい追及を回避するためや、佐川氏の国会答弁に合わせるためとしているが、では、そもそもなぜ佐川氏がそのような指示をしたのか。麻生太郎財務大臣は「それが分かれば苦労しない。そこが分からない」と無責任に言い放つ。ここを確定するのが調査の最大の目的のはずだ。このような意味で、今回の財務省の調査報告書は全く使い物にならない。

なぜ「分からない」のか。それは素直な事実関係の見方を否定するからだ。財務省の報告書は概ねきちんとしたものになっているが、最重要の一点について、つまり「安倍晋三首相が昨年の2月17日に『もし私や妻が関係していたなら私は国会議員や総理を辞める』と言い放ったことで、佐川氏が文書廃棄や文書改ざんに動いた」という事実について否定するから、全てのつじつまが合わず、麻生さんが「分からない」という言葉を発することになるのである。

自然な事実関係を否定すれば、全てがおかしくなる。逆に、この一点を認めれば、この調査報告書は全体のつじつまが合ってくる。

これは日大アメフト問題と全く一緒だよね。内田氏や井上氏はラフ・プレーの指示は出していないと言い張った。しかし関係者の証言や客観的な事実から考えると、内田氏や井上氏の主張は不自然極まりない。だから、関東学連の規律委員会は、内田氏や井上氏がラフ・プレーの指示を出したという認定をし、それで全体のつじつまが合うようになった。

安倍政権が、会計検査院や検察ではない、事実関係の解明を担う第三者調査を拒む理由

財務省の文書改ざん事件において、財務省の調査だけでは不十分だ。肝心の佐川氏の動機の部分が不明瞭なままでは調査の意味がない。ここは関係者の証言や客観的な事実から、社会通念に照らしてズバッと、全体としてつじつまの合う事実関係の認定をしてくれる第三者調査が必要なところだ。

今回の調査報告書は、ギリギリのところは守る役所お得意の言い訳文書みたいなものだ。だから国民もスッキリしないし、当の麻生大臣でさえ、肝心なところは「分からない」となってしまう。麻生さんだって無責任極まりない。自分で分からないなら、分かるようになるために、調査の陣頭指揮を執るべきだ。今回は第三者調査ではなく、財務省自体の調査なんだから、麻生さんが直接指揮命令を下して調査をする責任がある。

当の大臣が「分からない」なら国民が分かるわけないじゃないか! 麻生さんは、ここは普段の親分肌を脱ぎ捨て、国民の代表として、財務省という組織に厳しく指揮命令を下し、麻生さん自らがスッキリ全てが理解できるような調査報告にすべきである。しかし、それが困難だからこそ、第三者調査が必要になるんだ。

だいたい、財務省というところは、福田淳一前事務次官のセクハラ騒動のときに、週刊誌や被害者側から決定的な証拠とともに事実を突きつけられるまで、福田氏のセクハラの事実を明らかにすることができなかった役所だ。福田氏が否定している以上、それ以上のことは何も言えないとしていたんだよ。財務省は、所詮、自らの不祥事についてはこの程度の調査能力しか持っていない。森友学園問題をめぐる財務省の杜撰・不適切な様々な対応も、報道で次からに次に指摘されてから、財務省が追認するというお粗末な状況だった。そもそも佐川氏などがあれだけ、国会で嘘を言い続け、国会ではそのおかしさを野党から指摘され続けても、1年にもわたって何の事実解明もできなかった財務省。

ほんと腹立つのは、財務省は、自らの不祥事を認めることは、決定的な証拠を突きつけられるまではやらない。積極的に事実関係の調査もしない。しかし言い訳をすることになると、テキパキと調査報告書をまとめるんだよね。これは財務官僚の証言なども同じ。自分の不祥事に繋がることになると、証言拒絶や、「記憶にございません、記録はありません」の答弁をするけど、言い訳をすることになると、鮮やかに記憶が蘇り、弁舌が活性化する。

今回の調査報告書をまとめる力があるのであれば、なぜ1年前から、きちんとした調査をしなかったのか。役職組織が調査に消極的なときこそ、強烈な陣頭指揮をとって調査に臨むべきは政治家の責任だ。まさに麻生大臣や安倍政権の責任の根源は、この調査を会計検査院や検察に丸投げし、自ら積極的にしなかったことにある。

このような財務省や安倍政権の調査能力を見れば、関係者の証言や客観的事実から、社会通念に照らして全体としてつじつまの合うようにズバッと事実関係を認定してくれる第三者調査が必要なことは明らかだ。まさに内田氏や井上氏の主張を虚偽と断定し、自然な納得感のある事実認定を下した関東学連規律委員会のような調査がね。

このように事実関係を明確に断じることが第三者調査の威力でもあり、調査される側が最も恐れるところなんだよね。安倍政権が、財務省の不祥事について頑なに第三者調査を拒む理由はここにあるんだろうね。

(略)

(ここまでリード文を除き約3800字、メールマガジン全文は約1万2400字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.106(6月5日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【学校スポーツ改革】本丸は夏の甲子園! 日大アメフト問題を好機に全面改革だ!》特集です!