今年で創業50年のコメダには、「定番メニューで、変わらないのもコメダらしさ」という店舗哲学がある。だが消費者意識の変化とともに、定番だけをかたくなに守る姿勢は厳しくなった。そこで近年は、新商品や期間限定品を積極投入する。人気となったメニューの一部を「定番品」に昇格させることもある。

そう考えると「コメ黒」の位置づけが理解しやすいが、実は別の側面も隠れている。

「ブラック嗜好」や「フォースウェーブ」に対応

それは「ブラックで飲む時代」と「フォースウェーブコーヒー」への対応だ。

戦後の高度成長時代から一般的になったコーヒーは、フレッシュと砂糖を入れて飲むのが定番だった。だが近年は健康志向の高まりもあり「ブラック」で飲む人が多い。

コメダが一足先に、そうした客層に向けて出したのは、アイスメニューだ。定番の「アイスコーヒー」(基本は甘みシロップ入り)に加えて、「金のアイスコーヒー」という商品を開発し、2016年から各店に展開した。ドリップコーヒーにエスプレッソコーヒーを“ブレンド”した品で、こちらも甘みシロップやコーヒーフレッシュはつけない(頼めば出してくれるが)。それをホットメニューで応用したのが「コメ黒」といえる。

コメ黒(画像=著者提供)

もう1つは、老舗コーヒー店としての意地だ。「サードウェーブコーヒーやハンドドリップコーヒーをウチでも考えよう」という機運が高まり、開発を始めた。中京地区の「コーヒー屋にロマンを持っている」FC店オーナーの要望もあったと聞く。

開発に当たり、経営幹部が東京都内の名店も視察した。1杯ずつ丁寧に淹れる名店のレベルでは「多店舗展開」がむずかしかったが、大手メーカーの機器を導入して工夫すれば、おいしい味が抽出できることがわかった。

サードウェーブに続いて、現在は第4の波「フォースウェーブコーヒー」の時代といわれる。それには同じ農園でも栽培方法の違いを求めるなど、いくつかの潮流がある。さらに美味となる「データ」を入力すれば機械が味を安定させてくれる動きも出てきた。「コメ黒」は、メーカーと共同開発した専用機器で淹れている。