2011年7月4日(月)

なぜ中国駐在1年内に「心の危機」が起きるのか

PRESIDENT 2011年5月30日号

著者
中村 正人 なかむら・まさと
ジャーナリスト

編集者。日中ビジネスと現地の動向、特に訪日旅行市場を継続的に取材。共著に『中国人から儲ける本』(宝島社)、『観光資源大国ニッポン』(洋泉社)など。

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ジャーナリスト 中村正人=文
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日本企業の相次ぐ進出で2010年、上海の在留邦人が5万人を突破。中国全土ではその3倍近い日本人が在住する。こうした中、現地では駐在員のメンタルクライシスが問題になっている。

本社の無理解を象徴する造語「OKY」

経済成長を続ける中国市場に駐在員を送り出す日本企業の期待の高さと、社会のフォーマットが基本的に日本とは異なる中国での現地ビジネスの内情との間には、大きなギャップがある。そのため起こる本社との板ばさみに、中国人社員とのコミュニケーション不全が加わる。商観念や慣行も違う。

駐在員の多くは、変化の激しい中国社会での仕事と生活がもたらす数々のストレスやプレッシャーの中で、不眠症や自律神経失調症に悩まされ、なかには適応障害や急性ストレス症候群、うつ病、最悪のケースでは自殺に至る例も毎年のように報告されている。

中国で「公寓」と呼ばれるサービスマンションに暮らす駐在員家族も、社会規範や衛生状況の異なる中国社会が怖くて街に出られないといった不安神経症や、「日本人ムラ」といわれる「公寓」の閉鎖性からくる対人ストレスがメンタル不調を引き起こすケースも見られるようだ。ただでさえ心労の多い駐在員にとって帯同家族のメンタルヘルスは気の重い問題といえるだろう。

北京VISTAクリニック心療内科の徐沐群医師は、日本人が中国でメンタルクライシスに陥る一般的なパターンを次のように説明する。

「発症は駐在して4カ月から半年後が多い。最初の数カ月は中国社会に新鮮な驚きをおぼえ、興奮し、緊張しているが、生活に慣れていくうちに、だんだん中国社会のマイナス面が見えてきて、中国人社員とのコミュニケーションの取り方に悩み始める。最初は気にならなかった食や水、気候、住環境の違いもストレスとなり、気分がイライラし、不眠や下痢が続くといった身体上の変化が起きてくる。たいていの人は1年を過ぎると安定してくるが、適応障害や急性ストレス症候群になるケースの8割は駐在1年以内だ」

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