あなたが僕みたいにならないと本当にいいな、と思います。発達障害の発現形は実に人それぞれで、この本に書かれているライフハックが必ずしも通じるとは限りません。でも、少なくとも「僕はこのように失敗した」という知見だけは、あなたに落とし穴の位置を伝える役目を果たせると思います。

それでも社会で「やっていく」ために

現在の僕は、不動産屋の傭兵営業マンとして働いています。もちろん数々の失敗もありますが、職場にはそれなりに適応できています。「何でこんなことがほんの数年前の僕にはできなかったのだろう?」と、とても不思議に思います。

借金玉『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)

でも、できなかったんです。もしかしたら、少し発達したのかもしれません。もしくは、経験が増えて対応力が向上したのかもしれません。でも、できることなら同じタイプの苦しみをこの文章を読んでいる皆さんに味わってほしくはないと思っています。

発達障害の特性を強く有したまま人生を駆け抜けていける人も、まれにいます。それはそれでとても素晴らしいことです。

しかし、僕を失敗に導いたのは、まさしくそのような発達障害者たちの神話でした。自分は突出した能力を持っていて、それひとつで社会を駆け抜けていけるのか。それとも、欠損を抱えた人間として社会に順応していく努力を重ねる必要があるのか。僕は今、明確に後者が自分であると認識して生きています。

僕はジョブズではない。エジソンでもない。社会の中で稼いで生きていくためには、己を社会の中に適応できる形に変化させていくしかない。言うなれば、呑み込むべき事実はたったそれだけなんです。それさえできれば、後は具体的にどうするかという戦略を組み立て、トライアンドエラーを繰り返すだけのことです。

この文章を書けるようになるまでに、取り返しのつかない時間が浪費されました。何をどう悔いても、時間は戻ってきません。20代は終わってしまいました。

とは言え、僕はまだ人生を諦める気はありません。神話的な発達障害者になることを諦めただけです。地道に愚直に積み上げることを今更ながら目指すだけです。

そして、ほんの少しでもあなたのお役に立てればうれしいです。

借金玉(しゃっきんだま)
1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害者。幼少期から社会適応が全くできず、登校拒否落第寸前などを繰り返しつつギリギリ高校までは卒業。いろいろありながらも早稲田大学を卒業した後、何かの間違いでとてもきちんとした金融機関に就職。全く仕事ができず逃走の後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも昇った角度で落ちる大失敗。その後は1年かけて「うつの底」からはいだし、現在は営業マンとして働く。ブログ「発達障害就労日誌」(http://syakkin-dama.hatenablog.com)ツイッター @syakkin_dama
(写真=iStock.com)
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