江戸時代の妊婦・出産や乳幼児の栄養に関しては、迷信に基づいた間違った知識が多く、こうしたことが身長が伸びなかった原因なのではないかと考えられます。

明治時代に入って日本人の身長は急激に伸び始めます。また、興味深いのはこの時期から、頭の形も前後径が急激に短く・横径が長く(上から見たとき円形に近く)変化していることです。

ダイエット信仰で“低身長化”が進んでいる

第2次世界大戦以降は身長の伸び方がさらに急角度になっていますが、これは衛生状態の改善や、ビタミンなど栄養価を高めた人工栄養(粉ミルク)が普及したのが効いていそうです。また、食の欧米化もあって、日本人の動物性タンパク質と脂肪の摂取量は、戦後急激に右肩上がりになっています。

ところが近年、日本人の身長に関して気になる傾向が出ています。7歳時の平均身長が1990年(1983年生まれ)以降伸びが止まり、最近はむしろ低くなる“逆転現象”が起きているのです。

これはちょうど、妊娠中の体重増加を抑える保健指導が行われたり、出産適齢期女性の平均BMIが21を割り込んだ時期と一致しています。明治から150年続いた日本人の高身長化は、女性のダイエット信仰によってついにストップするのでしょうか!?

河内まき子(こうち・まきこ)
産業技術総合研究所人間情報研究部門名誉リサーチャー
通産省工業技術院生命工学工業技術研究所、東京大学流動講座教授などを歴任。
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