(2)複雑さと不確実さにうまく対処する

技術交渉に先立って、当該技術について学べるかぎりのことを学ぶことはすべての当事者の利益になる。交渉の席に技術顧問を連れていくとしても、技術的・科学的原理、取りうる選択肢、効果的な実行を阻む障害についておおまかに理解しておくことは必要だ。

ネゴシエーターはさらに、時間的なプレッシャーや不確実さを自分の側に有利に働かせなくてはいけない。われわれの調査では、不確実さに長期間耐えられる人は、不確実さを排除しようとする人より利益を手にする確率が高いことが明らかになった。不確実さを受け入れる目新しい方法に、付随契約(contingent agreements)がある。付随契約には、価格や納期や履行義務の変更を含め、将来起こりうるいくつものシナリオを記した一覧表を盛り込んでもいい。法務担当部門はこうした仕事を嫌がるものだが、それでもやはり、不確実性が高い場合には、さまざまなシナリオを想定して、それぞれについて「誰が何を得るのか」を明記しておくことが当事者の最善の利益になる。

(3)戦略的再編の難しさに備える

ほとんどのネゴシエーターが組織変更は簡単にはいかないだろうと思っているにもかかわらず、必要な戦略的再編を十分考慮に入れた技術契約が結ばれることはめったにない。技術交渉によって組織の構成や価値観や手順の変更が必要になると予想されるとき、それにともなう組織の利害を明確に理解したうえで交渉に臨む必要がある。

第一に、変更によって影響を受けると思われる人々と事前に協議しよう。第二に、交渉中もそれらの人々とコミュニケーションをとり、彼らに最終結果に対する発言権を与えることを検討しよう。第三に、近い将来何を行い、何を行わないかという約束が非現実的なものにならないよう注意しよう。

組織変更を唱えたり約束したりするだけでは望ましい結果は得られない。システムや戦略や価値観を変えようとすると、抵抗はまず避けられない。人々に考え方や行動の仕方を変えさせるのは、大仕事だ。それに加えて、技術の変化をうまく推し進め、そのために必要な資源を確保する仕事を誰かが責任を持ってやらなければならない。

(翻訳=ディプロマット)