なぜ退職一時金を得ると「貧乏老後」につながるのか?

しかしここで「では退職金は一時金で」と決めてしまうのは早計だ。そもそも退職金制度は法律で決められているものではなく、企業年金制度を採用していたとしても、受給期間や受給額など年金の中身は企業によって違う。

企業年金は公的年金と違い、完全な掛け捨てにならないよう、最低保障がついている場合もある。また最近は少なくなっているが、終身年金を採用している企業であれば、長生きするほど額面が有利になる。まずは自社の就業規則で退職金規程を確認し、どのように年金を受け取れるのかを把握しておくことが重要だ。

中小企業の「退職給付金制度なし」は、2000年は10.7%、14年は21.1%だった。特にこの数年、増加傾向にある。

また手元にお金があればあるだけ使ってしまう人や、儲け話に簡単に乗ってしまう人は、退職金を手にした途端、慣れない投資に手を出してしまうケースもある。そのように一時金を得ることが「貧乏老後」への道につながる危険性がある人は、税金を一種のリスク回避料ととらえて、年金を選ぶのもひとつの手だと言えよう。

▼まずは自社の就業規則で退職金規程を確認することが重要

土屋信彦
特定社会保険労務士

1963年生まれ。アイ社会保険労務士法人代表社員。IPO・内部統制実務士。労務監査、上場支援などが強み。著書に『定年前後の知らなきゃ損する手続きマル得ガイド』(アニモ出版)など。

(構成=山田由佳 写真=iStock.com)
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