狙われやすいのは、住宅手当・配偶者手当・家族手当

基本給やボーナスは、仕事の成果や貢献度の違いで格差を設けることについてある程度合理的な説明が可能だろう。しかし、諸手当については非正社員にのみ支給しないという合理的説明は極めて難しい。

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実際に正社員に支給し、非正社員に支給していない手当は多い。日経リサーチの調査(「柔軟な働き方等に係る実態調査(2668社)」2017年3月)によると、正社員に支給している手当(※)は平均6.9種類なのに対し、非正社員は3.0種類と大きな開きがある。

※主に通勤手当など。所定外賃金(時間外手当、深夜手当など)は除く。

とくに、住宅手当、配偶者手当、家族(扶養)手当といった仕事の出来・不出来とまったく関係のない属人手当といわれるものを非正社員に支給しないのは完全にアウトだろう。

▼「家族手当」従業員1000人以上なら2万1671円

では、どうするのか。

非正社員にも支給するのか、手当そのものを廃止するのか2つに1つしかない。日本郵政グループが選択したのは住居手当の廃止だった。住居手当の支給額は、最大で年間32万4000円と金額が大きい。さらに、これと同じくらい金額が大きい「家族手当」(※)の削減についても労働組合と継続協議中だという。

※会社が社員の生活を支援する目的で、扶養する家族人数に応じて基本給とは別に任意で支給。支給の有無は、会社の就業規則などにより異なる。支給額は、扶養配偶者の人数によって変わる。支給基準は、税法上の扶養配偶者(年収103万円以下)とするケースが多い。

ちなみに、厚生労働省の「就労条件総合調査結果」(2015年)によると、「家族手当」は平均では月1万7282円、従業員の人数別にいうと、1000人以上:2万1671円、300~999人:1万7674円、100~299人:1万5439円、30~99人:1万2180円と、大企業であるほどその額も多い。

一方、トヨタ自動車では今春闘で期間従業員の家族手当について、正社員と同等の子ども1人つき2万円を支給することを決めている。高収益企業のトヨタはこのようなことができるのだろうが、収益に苦しむ企業は住居手当や家族(扶養)手当の廃止を打ち出すことも大いにあるだろう。