EV追撃へオールジャパン体制で臨む

個別の取り組みを見ても、トヨタにしかない「凄み」があります。

2017年12月には、EVの基幹部品である電池の開発でパナソニックとの提携を検討すると発表しました。

田中道昭『2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路』(PHPビジネス新書)

電池はEV車のコストの大半を占めるものであり、EV事業を黒字化する際のボトルネックになるもの。パナソニックとの協業で、黒字化を急ぐ構えとみられます。

また既存のリチウムイオン電池に替わる次世代電池の有力候補であり、小さく軽量でありながら航続距離の長さや充電時間の短さ、安全性で優れる「全固体電池」の共同開発にも乗り出すといいます。

各国も研究開発を進めるなか、全固体電池はいまだ実用化の手前。それでもトヨタは2000年代から基礎研究を続けたという実績があります。そしてパナソニックは現在、リチウムイオン電池の世界最大手であり、テスラのパートナーでもある。トヨタとパナソニック、EV用電池で手を組むには現状、最強の相手だと言えるでしょう。電池を制するものが、電動化を制するのです。

今後はハイブリッドに偏ることなく、EV、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)といった電動車の全方位戦略を進め、2030年までに世界で550万台以上の電動車を、そのうちEVとFCVであわせて100万台以上の販売を目指す方針です。前述の通り、トヨタ、マツダ、デンソー、スバル、スズキ、ダイハツ、日野自動車の「オールジャパン」体制による新会社では「EV C.A Spirit」でEVの基盤技術を開発し、さらにはパナソニックとも連携。EVを本格展開する準備を着実に進めています。

音声情報や位置情報にとどまるIT企業を凌駕

メガテック企業の強みとされるビッグデータの集積も進めています。ここでいうビッグデータとは、加減速や位置データなどの車両情報に、車両前方の動画データなど、車載センサーを通じて集められる全てのデータを指します。これらを、通信機能を搭載したコネクテッドカーから集めて蓄積しているのです。

ビッグデータといっても、音声情報や位置情報にとどまるIT企業を凌駕していると言えるでしょう。ここは極めて重要なポイントです。2016年には、こうしたビッグデータを活用して新しいサービスを開発する新会社「トヨタ・コネクティッド」を設立しました。

集められたビッグデータは「モビリティサービスプラットフォーム(Mobility Service Platform=MSPF)」に蓄積、サービス事業者向けにAPIを公開することで、自動運転の開発会社やライドシェア事業者、カーシェア事業者、物流事業者など、世界中の企業とオープンに共有、新たなサービスにつなげるとしています。