「自動運転×ライドシェア」なら人件費は不要

完全自動運転車が完成しても、高価格がネックとなり、一般利用者は「すぐ買おう」と思うほどのインセンティブがないかもしれません。しかしライドシェア事業者はすぐにでも完全自動運転車を導入したいはずです。というのも、「自動運転×ライドシェア」が実現すれば、運転手にかかる人件費は不要になります。

また利用者が増える時間帯でのドライバー不足、車両不足も解決してくれるはず。ここに、ウーバーが完全自動運転の開発を急ぐ必然が、またグーグルがライドシェアサービスとの提携を画策する理由があります。

ウーバーは「2018年中に自動運転配車サービスを開始する」と語っていましたが、同年3月に同社の自動運転車が歩行者をはね、死亡させるという致命的な事故を起こしてしまいました。これがもとで開発に遅れが生じると見られています。

ウーバーが創業者の時代にライドシェア事業を拡大してきた「武闘派」的手法は自動運転には絶対になじみません。グーグルなどが真剣に安全性にも留意して進めてきた自動運転化の流れを遅らせる動きが、このようなところから不用意に表れるのは残念なことでもあると思います。

筆者としては、抜本的に開発計画を見直し、これを契機に本当に安全性を徹底する体制を構築してほしいと願っています。同社の安全性や社会責任への配慮などを含めて、事故以降の事業展開を注視したいところです。

田中 道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティングおよびリーダーシップ&ミッションマネジメント。上場企業の社外取締役や経営コンサルタントも務める。主な著書に『アマゾンが描く2022年の世界』など。
(写真=時事通信フォト)
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