2009年11月11日(水)

「働きやすさ」と「働きがい」はどこが違うのか

PRESIDENT 2009年11月30日号

著者
守島 基博 もりしま・もとひろ
一橋大学大学院商学研究科教授

守島 基博

東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院社会学研究科社会学専攻修士課程修了。イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。組織行動論・労使関係論・人的資源管理論でPh.D.を取得。2001年より一橋大学商学部勤務。著書に『人材マネジメント入門』『21世紀の“戦略型”人事部』などがある。

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一橋大学大学院商学研究科教授 守島基博=文 平良 徹=図版作成
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働く人が転職先を選ぶ際、選択基準として「働きがい」より「働きやすさ」が重視される傾向にあるという。これらを確保するには、企業と働く人がともにつくりこんでいくことが必要であると筆者は説く。

なぜ企業にとって「働きやすさ」の提供は難しいのか

現在、働く人の意識のうえで、企業を選ぶ際に、働きやすさを重視するようになっているようだ。やや古いが転職支援会社のエン・ジャパンが2008年4、5月に行ったインターネット調査によれば、転職先を選ぶ際に、働きやすさと働きがいのどちらを重視するかを選択してもらったところ、働きやすさを選択する割合が、働きがいを選択する割合よりわずかだが多く、回答者約730名のうち、54%であった。この傾向は、働き盛りの30代、40代でも変わらず(おのおの57%と54%)、ようやく50代になって初めて48%に低下する。

私としては、人生の後半にさしかかった50代において、逆に働きやすさが多くなってもいいような気もするのだが、いずれにしても、企業の選択基準として働きやすさは、若手から中堅まで大きな位置を占めるようだ。

また、働きやすさと必ずしも同じではないが、転職先を検討する際、ワークライフバランスを考慮すると答えた割合も、87%である。考慮するポイントとしては、「休日休暇」(82%)と「労働時間(残業時間)」(78%)に回答が集中した。

ただ、こうした状況に企業が困惑しているのも事実だ。どんなにワークライフバランスが主張されても、また働く人がそれによって転職をしたとしても、いまだに企業が、そうした働きやすさを提供するのは難しいようだからだ。

なぜなのだろうか。私はこの背景には、ある一つの要素があるように思う。それは、企業がここしばらく、働きやすさという評価基準を無視して、仕事や職場の合理化を進めてきたことである。合理化とは、別の言い方をすれば、職務や職場の効率アップである。

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