現場のスタッフと話す時間がとれない。サービス業ではそんな悩みをよく聞きます。どうすればよいのか。ローソンで研修担当を務める清水とみかさんは「わざわざ時間を取らなくても、3秒間、目を合わせて、笑顔でパワーを送る。それだけでもコミュニケーションはとれます」といいます――。

※本稿は、清水とみか『ローソン1万3000店の結論! 元気スタッフの育て方』(プレジデント社)の一部を加筆・再編集したものです。

仕事の手を止め顔を上げて「おはよう! 今日も頼むね」

店長から「忙しくてスタッフと話をする暇がないんです」という相談をよく受けます。このときに私が必ずお尋ねすることがあります。

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「店長さん、お気持ちすごくお察しします、本当にわかります。でも、1つだけ伺ってもいいですか? 3秒の時間なら、取れませんか?」

すると、みなさん同じように答えてくださるのです。

「3秒ぐらい取れますよ」

当然だと思います。いくら忙しくても、たった3秒のゆとりもないという人はいないでしょう。そこでこうお伝えします。

「ですよね? だったら3秒で一言、『おはよう、今日もよろしくね!』って言えますよね?」

この一言に、みなさん「目からウロコが落ちた」ととても驚かれます。「おはよう」と挨拶するのは3秒あればできますよね。それと同じで、スタッフがお店に出勤してきたら、仕事の手を止めて、顔を上げて、「おはよう! 今日も頼むね」と笑顔で3秒、パワーを送ればよいのです。

わざわざ時間を取ってゆっくり話さなければいけないと思っている店長が多いようですが、個別面談だけがコミュニケーションではありません。お互いがしっかり顔を合わせて挨拶するだけでも、立派なコミュニケーションです。

▼スタッフに対するインパクトがまったく違う

スタッフが「おはようございます」とバックルームに入っていったときに、ストアコンピュータから目を離さずに、あるいは書類から顔を上げずに、ただ「おはよう」と言われるのと、一旦仕事の手を止め、パッとこちらを見て笑顔で「おはよう」と言われるのとでは、どちらが「よし、今日もがんばろう」と思えるでしょうか。当然後者ですよね。

もちろん、店長がこちらを見なかったからといって悪気なんてありません。しかしながら、前者が続くと、「今日も店長忙しそう、じゃあ私もそれなりにやっておこう」とスタッフに思われても仕方ないかもしれません。

店長にも店長の事情があります。もし、発注の締め切りに遅れるとお店に商品が入って来なくなるので、ストアコンピュータの画面とにらめっこの時間帯の店長が、顔を上げる1秒さえもったいないと感じる気持ちは痛いほどわかります。ですが、挨拶したスタッフに対するインパクトがまったく違うのです。

たった3秒でもコミュニケーションは可能です。「お客さまに笑顔で挨拶しよう!」と導いている店長ですから、自ら3秒、どんなときも「さすが、店長!」と尊敬されてほしいと思います。

ちなみに、縁あって採用したスタッフは、働き始めた1カ月がそのお店に定着してくれるか否か、勝負のときだと言われます。そこで、「どう? 大丈夫? わからないことはない?」などと特に最初の1カ月は頻繁に声をかけ、「あなたの様子を気にしているよ!」という態度を見せるのは、すごく重要です。これもまた、3秒あればできますね。