ただし、本社スタッフの一部が時に“対話力”がお粗末だと感じる。たとえば、代表電話で広報担当への取り次ぎをお願いしたことがある。電話窓口の担当者は、こちらが何者かを何度も問いただした挙げ句、「本人に確認して、本人からかけ直させていただきます」という対応だった。10年以上前から取材しており、これまでメールやりとりが中心のため代表電話にかけたが、相手も認識しているはず――と説明しても取り付く島がなかった。(結局、その日のうちに別件で広報担当から連絡が入り一件落着となったが、この件に限らず対応内容に疑問を持つ例が目立つ)。

「スタバ愛」を自ら醸成してきた店舗出身者と、「働く先の対象」として同社を選んだ人(転職者)の違いがあるのかもしれない。

直営率93%ゆえ「自前育成」

冒頭で紹介した国内3強のうち、スタバが他の2社と違うのは「直営店率」(自社運営と他社運営の比率)だ。全店舗1342店のうち、ライセンス店舗は96店なので直営店率「93%」。ドトール(1124店。直営190店/FC934店)は同「17%」。コメダ(805店。直営13店/FC792店)に至っては同「2%」にすぎない。

この意味するものは何か。自前店舗が多いほど、店舗スタッフの人材育成を自社で行う必要があるのだ。競合2社も取引先(FC店の店舗スタッフ育成)に向けた、独自の研修プログラムを設けているが、基本は相手先企業(FC店の運営企業)に委ねている。

スターバックスの店で生き生きと働く「グリーンエプロン」スタッフにとって、「ブラックエプロン」保持者は憧れの存在で、自分もああなれたらいい、という思いが芽生える。その技術発揮の集大成が、予選会から続いた今回の競技会なのだ。

なお、「毎年の開催は今回で最後」(広報担当)で、接客技術を競う場は別の大会「We Connect Cup」に引き継がれるという。「アンバサダーカップ」に代わって“社内一体感”を醸成することができるのか。同社の人材育成術についても、引き続き注目していきたい。

高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
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