アメーバ経営は、日本発の経営手法であり、日本の企業で働く人々の気持ちと合致したものでもある。しかし、この経営手法は日本国内だけでなく、海外にも応用されている。私は、アメーバ経営が海外に普及することによって世界中の企業に「現場革命」がもたらされるのではないかと考えている。どこの国でも、現場の人々はその重要さに釣り合った取り扱いを受けていない。現場の人々はこれまで「ヘッドカウント」としてとらえられ、不況になると真っ先に削減の対象とされていた。現場の人々が、その知恵を使ってホワイトカラーや管理職など給料の高い人々の仕事を代替することによってもっと大きなコスト削減が図れる可能性がある。その効果の大きさがわかれば、世界中で現場革命が起こるだろう。

アメーバ経営で時間当たり採算を向上させるための重要な手段は、作業時間を削減することである。残業の削減だけでなく、仕事が少ないときには、アメーバのメンバーを他のアメーバの応援に行かせるという方法がとられる。それを通じて、アメーバは柔軟に再編成されることになる。この柔軟性こそ、アメーバという名称の由来になっている。組織変革を待つまでもなく、外界の変化が即座に組織の再編をもたらすのである。

日本航空の経営改革は、その主たる競争相手である全日空のサービスの向上にもつながるはずである。全日空は、日本航空が政府援助を利用してダンピングをするのではないかと危惧しているようだ。しかし、日本航空でアメーバ経営がうまく行われる限りダンピング戦略は取られないだろう。お互いの付加価値を高めるための競い合いが起こるだろう。そのほうが顧客にとってもメリットがある。

国際線は1社体制にせよとの意見も聞かれる。しかし、何よりも必要なのは健全な競争である。競争相手同士がサービスの価値を高めるための競い合いをすれば、2社の国際競争力も高まる。コストの高い日本の航空会社はサービスの価値を高めることに頭を使わなければならない。航空サービスをコモディティーにしてしまったのでは、日本の航空会社の地位は低下せざるをえない。

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