公的年金の受給額を「42%増やす」方法があった

だからと言って、楽しむことを惜しみ、お金を無目的に抱え込む必要はありません。なぜなら一生涯、国から受け取れる「公的年金」があるからです。そして、この公的年金は増やすことができます。その方法は、「年金を受け取る年齢を遅くする」というものです。

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この具体的な方法を解説する前に、確認しておきたいことがあります。それは、もし年金未納期間があったら「後納する」ことでも、受け取る年金を“増やす”ことができるということです。なお2018年9月までなら、過去5年分まで納めることができますが、10月以降は過去2年間になります。

また、「60歳以降も国民年金保険料を払う(任意加入)」ことでも受け取る年金を“増やす”ことができます。

以上、2点を踏まえ、お伝えしたいのは、前述の「年金を受け取る年齢を自主的に遅くする(年金受給年齢の繰り下げ)」という方法です。

▼1カ月遅らせるごとに受給額は0.7%増える

退職した後、当面の生活費に余裕があるのであれば、年金の支給開始時期を遅らせることも考えましょう。

本来は65歳から老齢年金を受け取り始めますが、「繰り下げ受給」すれば、66歳以降の希望する時点に受給開始を遅らせることができます。1カ月遅らせるごとに金額は0.7%増え、65歳を上限の70歳まで遅らせると0.7%×5年間(60カ月)=42%増額されます。増額された支給額はその後、一生続きます。ただし、現在繰り下げできる年齢は「70歳まで」です。

仮に、受給開始を66歳に繰り下げた場合。65歳からもらい始めた人と累計の受給額が同額になるのは、77歳10カ月のときです。同じように70歳まで繰り下げると、同額になるのは81歳10カ月。それ以降は差が広がり、繰り下げ受給戦略は大成功となります。ただし、病気などで死亡時期が早まってしまうと、結果的に損をします。

年金額は、物価や賃金に合わせて、調整されます。物価が上がれば(=お金の価値が下がる)、それに応じてある程度、年金の受給額も上昇します。物価が下がれば受給額も下がります。

20年後、30年後の経済状況は誰にも予測できません。年金額は今よりも実質的に目減りする可能性もあります。その時、繰り下げ制度を利用して、元の年金額を増やしておくと、目減りした年金の影響をやわらげることが期待できます。