人生をやりなおすための思考法

生徒たちと話す中で、僕自身の思考法について聞かれることも多い。そんな時は、僕はこんなふうに話をすることに決めている。

どん底の状態からやりなおすために必要なことは、「考え方をずらしてみる」ことだ。どん底の状態の時は、「何をやってもうまく行かない」と思いがちだ。そのせいで、努力さえできなくなってしまう。

だから「こうじゃなきゃいけない」という思い込みを外して、少し「ずらして」考えることが必要だ。そうすることで別の生き方が見えてくる。心理学的に言えば、少し難しい言葉になるが、「認知の歪み」を改善させるということだ。

生徒からよく頂く質問とその答えを、幾つか書いてみる。

「高校を中退して5年ひきこもり、21歳になってしまった。これだけ遅れてしまったら将来仕事がないのでは? だから何をやっても無駄に思えてしまいます」

僕はこんなふうに答える。

「確かに、大企業であれば年齢を気にするところが多いかもしれない。けれども、マスコミや公務員は29歳ぐらいまで受験資格があるところも多い。またベンチャー企業・中小企業であれば、年齢を気にしない会社もたくさんある。アルバイトから入って認めてもらい、正社員に採用される例もたくさんある。今からでもいつからでも、人生はやり直せる。スタートが遅れても、仕事はありますよ」

そしてある生徒からは、

「夜早く寝ること、朝起きることが苦手です。大学の授業は選択制なので、毎朝早起きしなくても良いとは聞いていますが、将来働くことがとても不安で……」

これはかつての僕と同じ悩みだ。

「朝起きなくていい会社で、働けば良いと思う。確かに多くの会社では、朝の始業時間が決まっています。けれども、最近ではフレックスタイムを導入している会社も少なくありません。特にベンチャー企業であれば、明け方に寝て昼前に起きるような方もいます。夜中は仕事がはかどるという人も多いですからね。何を隠そう、僕自身も朝が起きられないので、いつもミーティングは朝11時以降にしています(笑)。ただ、大学入試は朝から行われるので、この日だけは我慢しよう」

苦手な人と無理に関係を築かなくても良い

今苦しんでいることが、永遠に続くわけではない、ということは、いつも心のどこかに留めておいてほしいと伝えている。また、必要な睡眠時間は年齢とともに変化するもの。それに睡眠障害が発達障害と関係している場合、発達障害の状態の変化によって、睡眠障害も変更する。確かに朝太陽の光を浴びることは睡眠障害を治す上で重要だが、自分なりのペースも大事にすればよいと思う。

また、こんな生徒もいた。

「人とのコミュニケーションが苦手です。大学や会社に入ってからの、人間関係が怖いです。苦手な人とどのように関係を築いていけばよいでしょうか?」

「苦手な人と無理に関係を築かなくても良いと僕は思う。大学ではクラス制を取っているところを除けば、自由に授業を選ぶところが多い。そのため高校までのように、特定のクラスの中で濃い人間関係を築く必要はない。またサークル活動も、強制ではない。つまり、“自分に合う”人とだけコミュニケーションを取れる場所。仕事についても、営業やサービス業ではなく、工場勤務やエンジニアなどの仕事に就くことで、“目の前の仕事を黙々とやる”ようなものを選んでみたらどうだろう?」

現代社会において、「こうしなければならない」なんてことは、ほとんどない。「学校」という仕組みも、「会社」という仕組みも、誰かがつくり出したものに過ぎない。

だから、その仕組みになじめなくてもがいているのであれば、そこから逃げ出して新しい道を探しても良いはずだ。