大学の目的は「語学学校への丸投げ」

「雇い止め」の目的はなにか。その後、しばらくしてその狙いがわかった。井上さんは話す。

「大学は私たちの代わりに誰が授業を担当するのか、説明会では明らかにしませんでした。しかし3月に入って、語学学校の講師と専任講師による『ペア授業』を実施すると発表しました。ペア授業の内容について、大学は『語学学校の外国人講師が授業を行い、専任教員は授業を観察する形式』と説明しています。これは授業の『丸投げ』で、許されるものではありません」

この「ペア授業」では、大学から委託された語学学校の講師が授業をする。だが厚生労働省は、「労働者派遣、請負のいずれに該当するかは、契約形式ではなく、実態に即して判断される」としている。つまり外部講師に、大学側が「授業の内容についての打ち合わせ」といった指揮命令行為をすれば、それは労働者派遣事業とはみなされ、法令違反の「偽装請負」となる。

語学学校に授業を委託することは認められない

一方で、語学学校が授業内容を決めることがあれば、文部科学省が禁止している「授業の丸投げ」になる。どちらにしても、語学学校に授業を委託することは認められないのだ。

問題はそれだけではない。日本大学は、今回解雇を告知した非常勤講師全員に、2014年の時点で、2016年から最低4年間の継続雇用を伝えていた。実際、井上さんが危機管理学部の非常勤講師に採用された時、大学から受け取った文書には「完成年度の平成32年3月までは、継続してご担当いただきますよう、お願いいたします」とある。

日本大学が井上さんに通知した文書(一部抜粋)

完成年度とは、学部などが新設されて、最初に入学した学生が卒業する年度のことを指す。つまり、学部ができて4年間は、継続雇用を大学が約束していたといえる。労働契約上の「期待権」が、この文書によって生じている可能性がある。

さらに、学部の設置から完成年度までの4年間について、文科省は、授業の内容や担当する教員について、原則として変更を禁じている。学部を新設する際、大学は文科省に「学部設置計画」を提出する。この内容は、合理的な理由がない限り、完成年度まで変更できない。たとえば教員が自己都合で退職した場合にも、代わりの教員を採用する際には大学設置・学校法人審査会による教員資格審査を受けなければならないのだ。