「家計簿経営」の実践で社員に経営者意識を

先ほどの稲盛経営の3つ目のキーワードである<アメーバ経営>ですが、広く知られた経営手法です。稲盛先生が京セラの経営理念を実現するためにつくり出した独自の経営管理手法です。会社の組織をアメーバと呼ぶ小集団に分け、その小集団を独立採算で運営しようと考えたものでした。

アメーバ経営では、各アメーバのリーダーが中心となり、自らの計画を立て、メンバー全員が知恵を絞って努力することで、目標を達成していきます。この経営手法の徹底化によって、現場の社員一人ひとりが主役となり、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現しています。

この経営手法は京セラをはじめ、稲盛先生が創業したKDDIや再建に携わったJALなど約600社に導入されています。

この「アメーバ経営」を参考にして、中小企業において活用しやすくするためのツールが、「家計簿経営」です。「家計簿経営」の活用によって、「理念」で謳っている事業経営の目的を、売上目標、粗利目標、利益目標、資金計画など具体的な数値で表せるようになりました。

その目的とするところは、「全員が経営者意識を持つ!」ということです。

「家計簿経営」もまた、各部署を「アメーバ」と呼ばれる小集団としてくくり、その月の「売上利益÷労働時間」を算出。時間当たり採算性の最大化を目指します。

この経営手法を採り入れて、2018年で6年目になります。それぞれのアメーバでは、メンバー全員が経営に参加し、自分の意見を述べなければいけない決まりがあります。意見を述べて話し合う場として、毎月開催され、全社員が参加している「家計簿経営業績検討会議」を行っています。

会議後、それぞれのアメーバリーダーは、ディスカッションで出た意見をもとに、問題があればその改善策を講じる必要があります。また、来月に向けての売上増加、時間短縮、時間当たりの採算性を上げるための行動を実行し、目標達成を目指さなくてはなりません。

西田芳明『高収益事業で、無借金経営!中堅建設会社が実践する「家計簿経営」』(プレジデント社)

進和建設工業は2017年で創業50年を迎えましたが、永続的に繁栄する会社であるために、強い財務力で収益力を高めること、強い経営力と組織力を育んでいく中で、経営者意識を持った社員の育成が大事になってきます。

結果、「家計簿経営」を導入してから、利益は確実に伸びました。有効な経営システムは、数字の成果を残しているのです。導入して6年目になると社員の意識が大きく変わり、全員が責任感を持って、目標に向かって走り始めています。

この手法によって、社員の経営者意識はどんどん養われています。将来的に分社の社長として任せることができる社員をたくさん育てることが、今の私の願いです。

西田芳明(にしだ・よしあき)
進和建設工業 代表取締役社長
1951年、大阪府堺市生まれ。1987年4月に2代目進和建設工業代表取締役社長に就任。「地域密着」で建設事業と資産コンサルティング事業を展開し、これまでに455棟以上の賃貸マンションなどを建築。現在でも入居率95%以上を維持するとともに、さらなるマンションの開発、技術の向上、低コスト化などにも力を注いでいる。著書に『行列ができるマンション経営』(しののめ出版)、『トップは志(ひと)をつくりなさい』(現代書林)、『土地活用の成功学』(クロスメディアパブリッシング)、『頭が勝手に働き出す思考法』(現代書林)がある。