「私よりキレイ」フリルとリボンの男子に魅了される

「僕たちの女装は武装なんです」とこゆきさんは言う。「僕たちは実は肉食で、草食男子ではないんです。恋愛対象は女の子だし、モテたいからこそ女装をしている」のだそうだ。

ゲイタウンなどにある女装バーの男性スタッフの恋愛対象は大抵男性なので、ここが大きな違いである。フリルとリボンが付いたロマンティックな衣装は、異性である女性の目を引くための戦闘服だという。「女装をするとモテる」ということを不可思議に感じる人も多いかもしれないが、私はこの話には、思い当たる節があった。

私が原作・脚本を手がけた舞台『男おいらん』は、幕を上げるたびに満員となる人気作で、何度も再演されている。客層は9割が女性。観客の女性たちは、男性役者たちが遊女姿で舞い踊るのを食い入るように見つめている。この舞台のオーディションには多くの役者のエントリーがあるが、彼らのほとんどが「遊女役をやりたい」と言う。屈強な男性であってもだ。なぜか。それは女装をすると人気が出るからだ。

しのんさんの特技はロードバイク。サプリメントにも詳しい(「まほうにかけられて」ウェブページより)
▼普通の女性が女装男子を愛でたくなる心理

『男おいらん』の舞台は江戸時代。「裏吉原」という架空の場所に売られてきた美少年が、男遊女となって客の相手をつとめる、という設定だ。男遊女を演じる役者は、女ものの着物をまとい、化粧もする。つまり女装に近い。終演後は好みの役者と写真を撮ることができるが、日を追うごとに男遊女役の人気が上がっていく。「女よりきれい」だからこそ、ファンが増えるのだ。

女性は美しく着飾ることで男性の気を引こうとする一面がある。しかし男性が女装し、自分以上に美しくなってしまったら、立つ瀬がない。同じ土俵で勝負された末の完全なる敗北感は、その瞬間、彼への敬意や好意に変わる。この人に自分は外見ではかなわないと悟ることで気持ちが楽になり、彼の美を素直に愛(め)でたくなってしまうのだ。

▼女装男子ドラマ・映画も人気 菅田将暉の女装に熱狂

東村アキコさんのコミック『海月姫』にも、女装の達人、鯉淵蔵之介が登場する。映画版では菅田将暉さんが、テレビドラマ版では瀬戸康史さんがこのキャラを華麗に演じ、女性たちをうならせた。この蔵之介もまた、女装はあくまでも趣味であり、恋愛対象は女性という設定なのである。

とはいえ、ただきれいに女装をしただけでモテるわけではない。「まほうにかけられて」の経営者のひとりであるニャンリオさんは、以前ホストクラブのホストだった経験を生かし、リズミカルなトークで切り込んでいく。前述のしのんさんは大型家電量販店の店員だったので、セールストークは得意だ。店内ではあちこちから女性客の笑い声があがる。人を楽しませる話術があってこそ、客は足を二度三度と足を運ぶのだろう。