つまり、サヴァンの人たちはノーマルな人たちに比べて、新しい能力が付け加わっているわけではなく、ノーマルな人の脳にも潜在的に存在している能力が、抑制がとれて表面に出てきているだけだ、というのです。

成功者はほぼ例外なく、脳の脱抑制に成功している

これを脳科学的にいえば、ノーマルな脳というのは前頭葉が働いて抑制が利いてしまっている脳であることに対し、サヴァンの脳というのは脳の抑制がはずれている状態、つまり「脳の脱抑制」ということになります。

実は、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブズなど、成功者となった人々はほぼ例外なく、脳の脱抑制に成功した人たちなのです。

脳に抑制がかかったノーマルな脳というのは、あらゆる思考や行動にブレーキがかかっている状態だといえます。

特に、物事を深く考える真面目な人ほど、何かを始めようとするとき「がんばるぞ!」「さあ、やるぞ!」と、ついつい意気込んでしまいがちです。

ですが、実はこれが脳の抑制を強めてしまう考え方なのです。

何か特別なことをやるんだと意識することで脳が構えてしまう。これが脳に抑制がかかった状態なのです。

ですから、物事を深く考えすぎないことを意識しながら、「とにかくやってみよう」と一点集中するのが、脳リミットをはずすための大事なポイントになってきます。

さらには冒頭で述べたように、「生まれ持った才能がないから、なかなか行動に移せない……」と悩んでいる人も、決して自分の限界を超えることが苦手なわけではなく、脳の抑制によって無意識に思考や行動にブレーキがかかっているだけなのです。

「でも、どうやって脳リミットをはずすの?」

そんな声が聞こえてきそうですが、それはある意味当然のことです。

なぜなら、私たちは脳リミットのはずし方を学校で学んだり、会社で実践したりしていないからです。

ですが、誰しもちょっとした工夫次第で、脳リミットをはずすことができるようになります。

あなたの脳は、無限の可能性を持っているのです。

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者。1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『すべての悩みは脳がつくり出す』(ワニブックスPLUS新書)など著書多数。新著『脳リミットのはずし方』。
(写真=iStock.com)
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