さらに、イラン政策やアフガニスタン戦略をめぐってトランプ大統領と対立してきたとされるH・R・マクマスター国家安全保障担当補佐官も、3月22日に解任。後任には北朝鮮強硬派のジョン・ボルトン元国連大使が指名されました。トランプ大統領にしてみれば、これから北朝鮮との真剣勝負をするうえで、交渉チームの右大臣・左大臣にポンペイオ氏とボルトン氏という気心の知れた強硬派を配し、万全を期したのでしょう。

元高官「会談が実現しなくても驚かない」

こうした中で、米朝首脳会談は本当に5月までに実現するのでしょうか。

これまで対北朝鮮との交渉に携わったことのある元国務省高官は、次のように述べています。「実現しなかったとしても、私は別に驚かない。あれから二週間、首脳会談に向けた準備をするチームもなければ、ホワイトハウス、国務、国防各省間の事務レベルでの協議が行われているわけでもない。それにトランプ大統領と金委員長が会って何を話すのか、アジェンダすら決まっていない。ポンペイオ長官人事が上院でいつ承認されるのかすらわかっていない。北朝鮮の国営メディアは、いまだにトランプ大統領が金委員長の提案を『受け入れた』ことを報道すらしていない。会談が実現しない可能性は十分ある」

百歩譲って、首脳会談が延期に延期を重ねて5月以降、今年後半に実現したとします――とにかくトランプ大統領と金委員長が、具体的なアジェンダもなく会うことになったとき、トランプ大統領はどうするのか。

トランプ大統領が愛読するという保守系紙「ニューヨーク・ポスト」は、「いつでも席を蹴る覚悟で」と題した3月9日付の社説で、次のように助言しています。「北朝鮮を真に非核化しうる合意のチャンスがあるとすれば、それはトランプが一切の妥協を拒否する覚悟で会談に臨んだときだ。トランプが勝利宣言をしたくてつい食いつきそうな、あの残念なイラン核合意と大同小異の合意はいくらでもあるだろう。だが、米政府が受け入れるべき唯一の合意は、完全で検証可能な、北朝鮮の核開発計画の廃棄だ。凍結ではない」(*注3)