データを劣化させて再構成するなど手口は巧妙

3者のうち、だれが画像データの改竄を行ったのかは、まだわからない。ただ手口はかなり巧妙だ。改竄後の画像データはドットが粗く、にじみがある。改竄の痕跡を消すために、わざと画像データを劣化させているものとみられる。また3ページ目から5ページ目まで、残高の数字はすべて書き換えられているが、金額のつじつまはあう。最後の2行だけを書き加えたのではなく、全体を再構成しているのだ。

なぜ融資が特定の支店に集中していたのか

スマートデイズをめぐっては、物件を不当な高値で購入させられ損害を被ったとして、購入者13人が、スマートデイズや建築業者などを相手取り、3月27日に約2億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。提訴についてスマートデイズは「訴状が手元に届いていないため、回答は差し控えたい」としている。

また金融庁は、大半の所有者の取得資金を融資したスルガ銀行に対して、銀行法に基づく報告徴求命令を出している。田中さんのケースのように、審査が通りやすくなるように書類を改竄したケースがほかにもあるからだ。金融庁は不正を見抜けなかった審査体制の実態のほか、特定の支店に融資が集中している点についても、スルガ銀行に報告を求めている。

スルガ銀行は返済が難しくなったオーナーに対して返済を事実上猶予したうえで、オーナーへのアンケートを行うなど社内調査を進めている。スルガ銀行は取材に対し「現在、社外の弁護士などと実態調査を進めている。時期は未定だが、調査結果がまとまり次第、公表したい」としている。

スマートデイズ(旧スマートライフ)の物件を扱っていたゼノン住販の配布資料より抜粋。

金融庁の森長官はスルガ銀を高く評価していた

被害者の会によると、スマートデイズの「かぼちゃの馬車」では、土地や物件の価格が上乗せされていたため、満室になっても毎月の返済資金をまかなえない事例もあったという。情報の非対称性を利用して、消費者をカモにする手口はゆるされない。また融資審査に問題があったとすれば、銀行の社会的責任も問われる事態となる。

金融庁の森信親長官は、現在異例の在任3年目に入っている。持論は地銀の再編だ。このため講演などでは「大きくなることが唯一の解決策ではない」として、スルガ銀行の名前をあげ、そのビジネスモデルを高く評価してきた。地銀が独自のビジネスモデルを築くことは重要だ。だが、その実例が「消費者をカモにする不正融資」だとすれば、銀行に対する信頼を毀損することになる。監督官庁の対応に注目が集まっている。

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