“最短”は5厘刈り(約2mm)、頭皮が透けて青々とする

すべて同じように見える丸刈りだが、髪の長さで印象は少し変わってくる。“最短”は「5厘刈り」。その長さは約2mm。頭皮が透けて、青々とした頭になるが、佐藤は一度だけ5厘を経験している。高校3年生のインターハイだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/sezer66)

「大きな大会の前なのでちゃんと刈っておこう、といつも通りにバリカンを当てたんですけど、『今日はやたら切れるな』と思ったら、髪の長さを調整するアタッチメントをつけるのを忘れていたんです。する気もないのに5厘になってしまって……」

冗談半分で同期に「おまえもやれよ」と勧めていたら、なんと後輩も含めてチーム全員が5厘刈りになっていたという。誰も強制したわけではなかったが、先輩たちの異様な雰囲気を察知した後輩たちが自主的に頭を5厘にカットしていたのだ。そのへんがいかにも日本の高校の部活らしい。

チームメイトたちの気合が入った応援もあり、5000mに出場した佐藤は5人のケニア人留学生たちに真っ向勝負。13分45秒23で2位に食い込む激走を見せた。14年前の好タイムは、現在もインターハイ5000mの日本人最高記録として輝いている。もし佐久長聖が長髪のチームだったら、こんな大記録は誕生していなかったかもしれない。

▼丸刈りは高校スポーツ界のひそかな“トレンド”

ちなみに高校の陸上部は、野球部と少し異なり、強豪とはいえないチームの丸刈り率は低い。しかも丸刈りのチームは礼儀もしっかりしている印象がある。修行僧といったら大げさだが、「坊主頭」には、精神を鍛える、気持ちを整える、という効果があるのかもしれない。

当たり前だが、丸刈りにしていると、髪をセットする必要もないし、どんな髪型にするのか迷うこともない。日々のトレーニングや、試合時に「髪」を気にしなくていいので、集中力という意味ではプラスに働くのではないだろうか。一心不乱に部活に打ち込む高校生アスリートにとっては、“究極の髪型”といえるかもしれない。

丸刈りでないとスポーツマンではないという時代ではないが、一周まわって、丸刈りは高校スポーツ界のひそかな“トレンド”となっている。今後、その流れはさらに強まるのかもしれない。

(写真=iStock.com)
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