なぜ寒さの厳しい地域なのに頭を丸めるのか?

ほかのスポーツではどうなのか。私が取材を続けている陸上競技の場合、昨年末の全国高校駅伝の優勝校・佐久長聖も部員全員が丸刈りにしている。標高約700mに位置する長野県佐久市は寒さに厳しい地域。丸刈り頭には不向きなようにも思えるが、冬になると彼らはニット帽をかぶってトレーニングに励んでいる。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/sezer66)

同校OBである佐藤悠基(日清食品グループ)、大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)ら日本を代表するトップランナーも高校時代は丸刈りで過ごした。同じく同校OBで現在はチームの指揮を執る高見澤勝監督は、「監督命令で丸刈りにしているわけではない」と話す。

「強制しているわけではありませんが、そういう流れになっていますね。反抗する選手もいません。さすがに冬はしないですけど、試合前になると、『5厘』に刈る選手もいますし、伝統という意味合いが強いんじゃないですか。佐久長聖では、陸上、野球、柔道、剣道が丸刈りにしていますが、それぞれのクラブで考えを持っていると思います」

▼丸刈りは高い志を持っていることの証?

実際に高校時代、丸刈りだった選手はどう感じていたのか。佐久長聖OBの佐藤悠基は「入学時から頭を丸めて行きました」と振り返る。

「僕らの時代も丸刈りにしないといけない、というのはなかったですけど、雰囲気というか、伝統ですよね。先輩たちが丸刈りだったので、気合を入れる意味でも、丸刈りにして行ったほうがいいのかなと思って、入学時から頭を丸めて行きました」

「1回やってしまえば、あとは慣れですよ。特に嫌だとも思いませんでしたね。部員全員が丸刈りなので、それが当たり前という感じです。クラスメートにもこの人は丸刈りの人なんだという認識を与えてしまえば、恥ずかしさはありません。嫌だなと思ったのは、最初だけです」

佐藤は静岡県出身で、大迫は東京都出身。彼らは競技力を伸ばすために、自ら長野県にある名門校に志願するかたちで入学しているだけに、丸刈りになるくらいのことは何とも思っていなかったようだ。

佐藤は「嫌なことを強制するのは良くない」と断言しつつも、その“効果”をこう話す。

「丸刈りが苦にならなくて、全員が同じように高い志で取り組むんだという心理になってくればいいんじゃないでしょうか。高校生の3年間しか経験できないわけですし、それだけスポーツにのめりこんでやるなか、頭を刈ることで気合を入れてやるのも青春です。バリカンで自らの頭を刈ると、気持ちもキリッとする。頭を丸めることで、スポーツに真摯に向き合えるというメンタルになってくれば意味はあるのかなと思います」