亡くなった後からでは大変な手続きが沢山ある。もし余命1年と宣告されたら、最優先にやるべきこととは何か――。

遺書の保管場所「貸金庫」は避ける

自分が動かなければいけない終い方の準備は最初の半年にやっておくべきでしょう。ここでは、その半年間に最低やっておくべきことを解説しましょう。「終活」が準備不足だといろいろな問題が起こります。自分の死後に家族がもめるところなど、誰しも想像したくないものです。

写真=iStock.com/akiyoko

死後に一番もめやすいのが遺産分割です。「お父さんが亡くなると、自分はいくら貰えるのだろう」と家族の間で腹の探り合いが始まることがあります。とくに親の余命が幾ばくもないとわかると、「お父さ~ん」とすり寄って、親の財産をあてにする子も出てきます。「相続財産が少ないからもめないだろう」と考えるのは早計で、裁判所による調停件数(司法統計・平成27年度)の約32%が1000万円以下、5000万円以下は約44%と、5000万円以下で76%を占めています。親は差をつけたくないと考えても、看病や介護などの負担を考えると「平等は反対に不平等」と思う子もいます。

とくに遺産がわずかな預貯金と分けづらい不動産の場合は“争続”にならないためにも遺言書を書き、不動産をどうするのかを決めておくことが大事です。遺言書には公正証書遺言書と自筆証書遺言書がありますが、費用や手間はかかるものの公正証書遺言書のほうが不備が少なく本人の意思も明確なため、死後の混乱は避けられます。

自筆証書遺言書は、死後に家族が見つけなければ意味がありません。保管場所や遺言書の存在を信頼できる人に伝えておくことが必要です。とくに要注意なのが金融機関の貸金庫。預ければひと安心と考えがちですが、費用もかかりますし、何より利用者が死亡すると相続手続きが終わるまで、その貸金庫を開けることができません。

自分の死後、家族にどのくらいのお金が必要なのか試算しておくことは重要です。すぐに必要になるのは葬儀費用やお布施、法要の費用です。死後にかかる費用を試算しておけば、支払われる死亡保険金などでまかなえるものも含め、どこまで事前に準備しておけばいいのかわかります。金融機関は名義人の死亡事実がわかると口座を凍結します。凍結後でも医療費や葬儀費用は所定の手続きをすることで引き出せることがあります。それ以外の預金引き出しには「相続人」を確定するために被相続人(死亡した人)の「出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本」が必要になりますので、戸籍謄本を事前に入手しておけば、必要になったときにはそれをもとに家族が取り直し、スムーズに相続手続きに入れます。