あらゆる話の組み立てに使える「サンドイッチ・フォーマット」

一方ストラクチャーとは、それぞれのコンテンツをどんな順番で話せば、聴き手にわかりやすく伝わるか、プレゼンテーション全体の組み立てを考えることをいいます。その際に使える万能のフォーマットが、私が「サンドイッチ・フォーマット」と呼んでいるものです。

サンドイッチ・フォーマットは、「イントロダクション」+「ボディ」+「エンディング」の三部構成となっています(図3参照)。

まず「イントロダクション」では、プレゼンテーションのテーマを示します。同時にそのテーマに関して、「もしかしたら皆さんもこんな問題を抱えていませんか」といった課題を提示します。そうすることで聴衆を「その話は自分に関係ありそうだ。もっと聞かせてよ」と聴く姿勢にしていくのです。

次に「ボディ」では、メインメッセージを打ち出します。メインメッセージとは、プレゼンテーションを通じて自分が最も伝えたい主張のことです。自社製品についてのプレゼンテーションでいえば、「今回当社が開発したシステムは、業務の効率化に悩んでいる企業の救世主となるシステムです」といった言葉が、メインメッセージとなります。

このメインメッセージを説得力のあるものにするためには、主張の根拠や、主張を実現するための具体的なプロセスを聴き手に示す必要があります。これがサブメッセージです。サブメッセージは2つだとやや物足りず、4つだと多すぎて覚えてもらいにくい。3つがちょうどいいでしょう。

そして「エンディング」では、もう一度メインメッセージと重要なポイントを繰り返します。ダメを押すことで、こちらが一番伝えたいことが、相手の心に深く刻み込まれるのです。

聴衆の前でライブで話していることを最大限に活かす

3つめのデリバリーでは、聴衆の前でライブで話していることを最大限活かすようにしてください。

せっかく目の前に聴き手がいるのだから、一人ひとりに目線を配りながら語りかけるように話します。話の内容に応じて、表情にも変化をつけます。またキーワードを口にする際には意識的にゆっくり話すなど、言葉に強弱をつけます。

逆に聴衆と目線を合わせず、手元のメモをそのまま読み上げるだけなら、プレゼンテーションなんかしないで、メモをそのまま相手に渡した方がまだマシです。プレゼンテーションはライブであることを肝に銘じてください。

こうしたことは本番で突然できるものではありません。「コンテンツ」や「ストラクチャー」を作り上げたら、本番前にリハーサルの機会を設け、そこでは「デリバリー」を意識しながら話すようにしてください。その際には録画や録音をし、自分でチェックしながら改善をしていくとよいでしょう。

聴衆分析をおこない、「コンテンツ」「ストラクチャー」「デリバリー」をしっかり準備するのは、最初のうちは時間も労力も使います。ただし慣れてくると、短時間でこうしたことができるようになります。何よりかけた手間の何倍ものリターンが本番のときに返ってきます。どうか愚直に実行してみてください。

西野浩輝(にしの・ひろき)
マーキュリッチ 社長
米テンプル大学MBA。大阪大学大学院修了。リクルートにて法人向け教育プログラムの営業、商品開発、マーケティングを担当。その後、アメリカン・マネジメント・アソシエーション(AMA)を経て、2003年に創業。これまで約6万人に指導。著書に『仕事ができる人の伝える技術』(東洋経済新報社)などがある。アダットパートナー講師。
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