その「聞く耳持たず」を「聞く耳を持つ」状態にするためには、「自分には関係ないと思っていたけど、実は大いに関係ありそうだぞ」と、いかに思わせるかがカギを握ります。その際、ちょっとしたショック療法的な煽りが効果的です。テレビの健康番組でいえば、「○○の病気って、お年寄りの病気だと思っていませんか。でも最近、40代の女性に増えているんです」といったトークがそれにあたります。そうやって危機感を高め、聞く気にさせることができれば、元々知識はあるわけですから、Dゾーンの聴衆は一気にAゾーンに移行します。

プレゼンテーションは「コンテンツ」「ストラクチャー」「デリバリー」で考える

聴衆分析が済んだら、いよいよ次は「その人たちに向けて、何をどのように話すのか」を練っていく番です。

プレゼンテーションがうまい人は、大きく3つの要素を備えています(図2参照)。

1つめは、話のネタそのものがおもしろいこと。つまりコンテンツ(内容)が充実していること。
2つめは、話が論理的でわかりやすいこと。つまりストラクチャー(構成)がしっかりしていること。
3つめは、聴き手を惹きつける話し方や振る舞い方ができること。つまりデリバリー(表現)の仕方がうまいこと。

おもしろい話(コンテンツ)を、わかりやすく(ストラクチャー)、魅力的に伝えること(デリバリー)ができたなら、鬼に金棒といえるでしょう。ですから「何をどのように話すのか」を練っていく際にも、この3つの観点で考えていくと、より完成度の高いプレゼンテーションになっていきます。

具体事例で聴き手を惹きつけ、共感させる

3つのうち、コンテンツづくりでは、「今回のプレゼンテーションの聴き手は、どんな話題に興味を持ってくれそうか」について想像力を働かせるところからスタートします。「今回は経営者層が中心だから、新製品を導入することが経営にどうプラスになるかを中心に話そう」「今回は現場の中間管理職が多いから、新製品の導入によって業務の効率化がどう進むかに力点を置こう」といったふうに考えながら、話題をピックアップしていくわけです。

コンテンツづくりでは、できるだけ事例やエピソードを多く盛り込むことを意識するのも大事です。「情熱大陸」などのテレビのヒューマンドキュメンタリー番組が人気なのは、登場人物の葛藤や変化、成長が描かれており、見る側も登場人物に共感し、一体化しやすいからです。

プレゼンテーションも同じです。自社製品についてのプレゼンテーションをする際にも、過去の導入事例を多めに盛り込んでいきます。どんな問題に直面していた会社が、その製品を導入したことによってどう変わっていったかというエピソードをありありと描写する。すると聴き手も、自分の会社が抱えている課題に重ね合わせるようにしながらその話を聞いてくれ、製品を導入した場合のメリットを実感してもらいやすくなるわけです。いち事例あたり最低30秒は時間をかけてじっくり話すようにしましょう。