今、走って「筋肉貯金」をしておくと老後はハッピー

(2)老後の「筋肉貯金」ができない

フィジカル的にいうと、ランニングは下半身強化につながる。日々の生活で動かす機会の多い上半身と違い、下半身は筋力の衰えが早い。日本老年医学会『日本人筋肉量の加齢による特徴』によると、個人差はあるものの、筋肉の萎縮・衰退は40歳くらいから始まるという。中でも下肢の筋力ダウンが大きく、50歳で約10%、80歳で約30%もの筋肉量が減少する。だからこそ、ランニングで意識的に鍛えたい。ウオーキングも初歩的なエクササイズとして悪くはないが、筋肉への刺激・効果という点ではランニングには及ばない。

写真=iStock.com/Nastco

下半身は、お尻の「大殿筋」、太ももの「大腿四頭筋」、ふくらはぎの「下腿三頭筋」など上半身と比べて、大きな筋肉が多い。ランニングによって筋肉量が増えると、基礎代謝量がアップするので太りにくくなる。

ランニングで主に強化できる遅筋(持続的に小さな力を発揮できる筋肉)は、速筋(瞬間的に大きな力を発揮できる筋肉)と異なり、加齢による衰えが小さい。そのため、フルマラソンはもちろん、ウルトラマラソン(100km走や24時間走など)でも50~60代の健脚ランナーは少なくない。

ちなみにマスターズのマラソン日本記録はM60(60~64歳)が2時間36分30秒、M80(80~84歳)が3時間30分18秒。彼らは必ずしも元アスリートや陸上部出身者ではない。努力すれば年齢を重ねても、元気一杯でいられることが理解できるだろう。

下半身の筋力が衰えると、出歩くのがおっくうになる。高齢者であれば、下半身の筋力低下の影響で転倒したり、運動不足によって肥満になったり、引きこもってしまったりすることは多い。かといって高齢になって、いきなり走るのは心肺への負担も大きい。筋力低下が顕著になる前からランニングを習慣化しておくことで、老後の“筋肉貯金”と“心肺機能の強化”につながっていく。これこそ健康長寿の秘訣である。また、これは男性に限った話だが、血液の循環が良くなることで勃起力も高くなると言われる。当然だが、走らないと、この利益も享受できない。

(3)“脳の働き”をよくできない

カラダが変わるだけでなく、ランニングはメンタル面にも大きく作用する。純粋にカラダを動かして、汗をかくことが気持ちいいし、ランニングなどの一定のリズム運動が「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促すからだ。セロトニン(脳内で働く神経伝達物質)は精神を安定させる物質で、朝日を浴びることでも増やすことができる(そんなわけで、ストレスを発散するには、“朝ラン”がお勧めだ)。

また、走ることで脳の血流もよくなるので、集中力や決断力が高まるなど、ビジネスへの好影響も期待できる。毎日10km走るのが日課だという脳科学者の茂木健一郎さんはプレジデントオンラインで、「走っている間に、脳がアイドリングして、特別な回路が活性化し、さまざまな記憶が整理されたり、ストレスが解消されたりといった効果もある」と書いている(http://president.jp/articles/-/23535)。また、レースに出場して、ゴールまで走り切れば、「達成感」を味わうことができるだろう。