クラブフロアの成り立ち

こうした概念の最初のケースはおそらく、ニューヨーク・マンハッタンの超有名最高級ホテル「ウォルドルフ=アストリア」(1931年に現在地に移転開業。現在は改装休業中)の「ウォルドルフ・タワーズ」であろう。

このタワーズは、専用の小さな玄関とレセプション・コンシェルジェ機能を持ち、ホテルinホテルとして運営されている。飲食サービス付きのラウンジはないから、一般的なクラブフロアとは概念、システムは異なるが、一般客室層より豪華で料金も高く、似ているところもある。そして、普通に宿泊はできるものの、主に長期滞在や居住用としての用途が高い。

現在のようなクラブフロアが生まれたのは、アメリカの「コンベンション・ホテル」に端を発するものと思われる。アメリカでは、企業や団体の大型会議・会食付帯の大会(コンベンション)がよく行われる。こうした傾向に合わせて1970年代ごろからハイアット、ヒルトン、マリオットなどの大型ホテル=コンベンション向きホテルが生まれてくる。

だが、このようなホテルでは若干の不都合が生じてくる。つまり、経営幹部クラスはスイート、一般社員は一般客室に宿泊するが、こうなると中間クラスが一般客室になってしまい、不満も生じる。そこで増加してきたのが飛行機のファースト、エコノミーの間のビジネスに近い、クラブフロア的客室層であると言われている。

このような動きの中、かなり古くからクラブフロアに力を入れてきたのは、ハイアットである。グランドハイアットでは「グランドクラブ」、ハイアットリージェンシーでは「リージェンシークラブ」といい、全ホテルではないが多くのホテルに設けられている。

コンベンション・ホテルの概念とはやや異なるが、ザ・リッツカールトンもクラブには注力していて、上記の5回のミール・プレゼンテーションのシステムを共通化させた「ザ・リッツカールトン・クラブ」を多くのホテルで運営している。