通常4つ咲きの染井吉野から7つの花が咲く

弘前城址には現在、染井吉野(ソメイヨシノ)を中心として約2600本の桜があります。

弘前の桜が素晴らしい理由、それは日本一とも言われる桜の手入れの良さにあります。弘前市の名産と言えばリンゴで、その出荷量は日本一です。桜はリンゴと同じバラ科の樹木。リンゴの栽培技術を桜に応用したことで、この素晴らしい桜たちが育っているのです。

「染井吉野寿命60年説」というフレーズが使われることがあるように、一般に染井吉野は短命といわれますが、弘前城址では130歳を超える染井吉野がとても元気に花を付けています。全国トップレベルの長寿です。手入れの良さを象徴していると思います。

もう1つ、手入れの良さを示す証拠があります。通常、染井吉野の1つの花の芽(花芽)からは4本の茎(花柄)が出て4つの花が咲くイメージがあると思います。図鑑にはそういったイラストが載っていることがありますよね。でも、弘前には「7つ咲き」の染井吉野があるのです。1つの花芽から7つもの花が咲くのです。桜の元気さ、そして手入れの良さを物語っていると思います。「7つ咲き」は弘前市民の自慢になっているそうです。

弘前の「7つ咲き」の桜。1つの花芽から7本の茎(花柄)が出ていることがわかる。(撮影=中西一登)

つまり、花の芽の数が同じだとしても弘前城址では花数が多くなる、したがって花のボリュームが違うということになります。そのため、他の名所よりも濃厚な桜景色を楽しむことができるのです。

水面に浮かぶ花びらが、何枚かくっついた様子を「花いかだ」と呼びます。花吹雪の時期には、弘前城址のお濠(ほり)の水面をピンクのじゅうたんが覆います。まるで歩けそうなくらい濃厚な花いかだが出現するのです。これも花のボリュームの違いを示していると思います。

桜の舞台となる城あとには、朱塗りの木橋や豪快な石垣、お濠、そして古い天守閣など、江戸時代からの城の風情がよく残っていて、それが桜とすてきなハーモニーをかもしだします。

屋台がずらっと並び、昔ながらの盛大な桜祭りも行われます。読者の皆さんにも、一度は行っていただきたいと思っています。