「桜を追いかける旅」1年間の密着取材

TBS系のテレビ番組「マツコの知らない世界」(3月20日放送の「桜の世界」)では、そんな私の旅を1年間にわたって密着取材してもらいました。マツコ・デラックスさんと視聴者の皆さんに、桜の知られざる魅力が少しでも伝わっているとうれしいです。

私は1987年に大学を卒業して以来ごく平凡にサラリーマン生活を送っていましたが、7年半付き合っていたカノジョにふられたことをきっかけに(笑)、30歳で会社を辞めて日本一周の旅に出ることにしました。妻子どころか彼女もいないフリーの間に旅をして、日本を隅々まで見ておきたいと考えたのです。

この時、漫然と旅をするのではなく、何か「テーマ」が欲しいと考えて、九州から北海道まで桜前線を追いかけてみることに決めました。当時は桜に対して特に思い入れはなく、「宴会の題材」「旅のテーマの1つ」くらいの軽い気持ちしかありませんでした。

でも、旅を進めていくうちに、桜がどんどん好きになっていったのです。

桜には、他の花にはない優美さがあると思います。近づいても離れても美しく、デリケートな淡い花色は日本の風情にとても合っていると思います。そして、1年のうち3日ほどしか見事な日はないという儚(はかな)さに、心動かされます。桜が見頃を迎えたと聞くと、サラリーマンをしている今でも、いても立ってもいられず旅に出たくなります。

最初は「お友だち」くらいにしか思っていなかった桜ですが、弘前城址(青森県弘前市)に行ってその思いが決定的に変わりました。桜にすっかり惚れてしまいました。今では、弘前城址は日本一好きな桜名所です。

弘前城址で撮った「奇跡の1枚」。夕方のお濠と立派な染井吉野です。フィルムカメラで長時間露光したため、人影がブレてほとんど写らず無人のような写真になり、桜が浮き立ちました。(撮影=中西一登)