「一人前で終わる人」と「一流になる人」の天と地

(2)「真剣勝負」

私が毎晩欠かさずに読む松下さんの『道をひらく』(PHP研究所)には「真剣勝負」という言葉の項目があります。人が成功するかどうか。それはもちろん能力の問題もありますが、それ以上に、ものごとに真剣に対応しているかどうかにかかっている部分が大きいと思います。

『道をひらく』(PHP研究所)の項目「真剣勝負」より

頭の良い人、要領の良い人は、人よりもうまく・早く物事ができるので、周りの人から評価されることが多いです。そのことは悪いことではありませんが、そういう人は、そのうちに、「適当に」ものごとをこなすようにもなりがちです。

そして、それが習慣化すると、いつかは、コツコツと、そして真剣にものごとを行ってきた人に追い抜かれ、人から評価されないということにもなりかねません。

要領の良い人が「一流」になりにくいのはそのためです。

「一人前」には人より早くなれるのですが、そこで慢心して、何事にも真剣でなくなり、「一人前」で人生を終えてしまうのです。もちろん、頭の良い人、要領のよい人の中にも常に真剣に物事に向き合う人はいますが、多くの人は社会人経験に慣れると少し緩みます。だから、いつも「真剣さが大切だ」という認識を持っていることが必要です。その意識の差が「一人前」と「一流」とを分けるのです。

新人社員や若手社員が、目の前のことを一生懸命、真剣にやることが重要なのは言うまでもありません。松下幸之助さんも、そのことを厳しく指摘されています。

「真剣」という言葉は、もともとは本物の剣ということです。

竹刀で防具をつけて剣道の試合をする場合には、打たれたら次は打ち返せばいいと思うかもしれません。しかし、木刀で防具なしとなると、打たれれば骨折ということにもなりかねませんから緊張度がちがいます。

「まして真剣勝負ともなれば、一閃が直ちに命に関わる。勝つこともあれば、また負けることもあるなどと呑気なことを言っていられない。勝つか負けるかどちらか一つ。負ければ命が飛ぶ」(『道をひらく』)

そういう気持ちで日々の仕事に取り組む人が成功するのです。