昨年12月、漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人という匿名で、群馬県中央児童相談所にクリスマスプレゼントとして10個のランドセルが贈られたことに端を発した“タイガーマスク運動”。その後、全国で同様の寄付活動が続き、1月20日には厚生労働副大臣・小宮山洋子氏が児童養護施設について社会的養護の充実に言及、ついに国をも動かす騒ぎになった。

1月、徳島の児童養護施設に届けられた、文房具、お菓子、みかんの入った段ボール箱とランドセル。(PANA=写真)

1月、徳島の児童養護施設に届けられた、文房具、お菓子、みかんの入った段ボール箱とランドセル。(PANA=写真)

児童福祉法に定められた児童福祉施設の一つである「児童養護施設」とは、かつて「孤児院」と呼ばれた施設だ。保護者がいない場合や虐待されている場合など、環境上養護を必要とする児童が入所する。現在は約3万人の子どもたちが入所している。

入所原因はさまざまだが、近年では育児放棄や虐待による入所者が年々増加している。厚生労働省の調べによると、入所児童のうち約3割が虐待を理由として施設に入るという。

じつは、入所者の一つの大きなテーマは施設からの自立だ。児童養護施設は原則18歳で退所しなくてはならないため、自立時は精神的にも経済的にも非常に厳しい状況となりやすい。また、児童養護施設退所児童の大学進学率は全国平均を大幅に下回っており、進学の困難さもうかがえる。彼らを継続的にサポートすることが必要だが、まだまだ不十分といわざるをえない。

児童養護施設自体は、現在、インフラ面の整備が進みつつある。児童虐待の事件が後を絶たない中、タイガーマスクは子どもたちを受け入れる社会づくりの必要性を示してくれたのかもしれない。

(PANA=写真)